【男1:女2】Patchwork

男1:女2/時間目安 40分


作中にヘンリーが演奏している場面があります。ここに関しては実際に弾くも良し、音を流すも良し、音無しでやるも良しです!どのような形でも楽しめるように作りましたので演者様のやりたいようにお楽しみください。


【題名】
Patchwork
(ぱっちわーく)


【登場人物】
ヘンリー:路地裏にギターを弾きに来る男。
エヴァ:路地裏に住む娼婦。
リン:路地裏に遊びに来る奴隷の女の子。


(以下をコピーしてお使い下さい)

『Patchwork』作者:なる
https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/8315527
ヘンリー(男):
エヴァ(女):
リン(女):



-------- ✽ --------





【路地裏にて】


<ヘンリーがギターを弾いている>

001 リン:パチパチ!今日も素敵だったよ!ありがとう!お兄さん!

002 ヘンリー:今日も聞いてくれてありがとう可愛いお嬢さん。……さて、そこの美しいお嬢さん、今日こそ出てきてくれないか?

003 エヴァ:……気づいてたのね。

004 ヘンリー:ここで弾く度に聞きに来てくれるんだから覚えてるよ。美しいお嬢さんお名前は?

005 エヴァ:……エヴァ。

006 ヘンリー:エヴァ……素敵な名前だ。こちらの可愛いお嬢さんは?

007 リン:あたしリン!リンだよ!

008 ヘンリー:リン、可愛い名前だね。

009 リン:パパが付けてくれたんだよ!

010 ヘンリー:お父様はいい名前を付けてくださったんだね、よかったね。僕はヘンリー。よろしくね。

011 リン:うん!よろしくね!……あ、リンもう御屋敷に戻らなきゃ!じゃあね!

<リンが去る>

012 ヘンリー:さて、エヴァ?こっちに来て少し話相手になってくれないか?

013 エヴァ:少しくらいなら……。

014 ヘンリー:ありがとう。……今日はどうしてこんなに長く残ってくれたの?

015 エヴァ:別に特に理由は無いわ。

016 ヘンリー:そっか……ねぇ、こんな時間に、人気のない路地裏になんていていいの?危ないよ?

017 エヴァ:その路地裏で私の事呼んだ貴方が言う?

018 ヘンリー:それもそうだね。……エヴァ、ご家族は?

019 エヴァ:……一応いるわ。

020 ヘンリー:一応って……ご家族心配しないの?

021 エヴァ:心配しないと思う。

022 ヘンリー:仲、悪いの?

023 エヴァ:どうなんだろうね。ところで、今晩私のこと買ってくれない?

024 ヘンリー:……旦那さんいるんだろう?

025 エヴァ:……私娼婦なの。身体を売る事でしか金を稼げない娼婦。だから私の事買って?

026 ヘンリー:エヴァ?

027 エヴァ:これでも具合はいいって言われるのよ?絶対満足させるからさ、お兄さんにとっても悪い話じゃないでしょう?

028 ヘンリー:……エヴァ。僕は君のこと買わないよ。

029 エヴァ:なんで?こんないい女目の前にして手を出さないとかある?これでも、多少固定の客はいるのよ。

030 ヘンリー:君はとても美しいよ。でも、君のことは買わない。

031 エヴァ:……どうして?

032 ヘンリー:君は旦那さんのことを大事に思っているだろう?…あと、お金を払うのは僕の方だから。

033 エヴァ:どういう事?

034 ヘンリー:まず、ほとんどの娼婦は指輪はしないよ。男が逃げちゃうからね。

035 エヴァ:あっ……。

036 ヘンリー:今更隠しても遅いよ。

037 エヴァ:そう……それで、お金を払って話は?

038 ヘンリー:君は、君の時間を使って僕の演奏を聞いてくれた。しかも最後まで。その時間分のお金を払うのは、僕。だろ?

039 エヴァ:意味がわからない……。

040 ヘンリー:まぁ分からなくてもいいさ、はい。今日の分のお金。

041 エヴァ:こんなに……?

042 ヘンリー:そのお金を君に渡すくらいの価値が僕にはあった。それだけの事だよ。しかも今日は君の名前も聞けたし、話もできた。最高の夜だったよ。

043 エヴァ:そう……じゃあ遠慮なく。後々こんな大金返せって言われても返さないからね。

044 ヘンリー:言わないよ。それは僕が君の時間を買ったお金。後払いになっちゃったけどね。

045 エヴァ:……変な人。

046 ヘンリー:あはは、よく言われるよ。……さて、そろそろ僕は失礼しようかな。

047 エヴァ:そう、じゃあね。

048 ヘンリー:家どこ?送るよ。

049 エヴァ:大丈夫、近くだからすぐ帰れるし。じゃあね。

<エヴァが去る>

050 ヘンリー:あっ、行っちゃった……。ふぅ……エヴァにリンか。また遊びに来てくれるといいなぁ。……さて、帰るか。

<遠くの方でエヴァが話をしている>

051 ヘンリー:……あれ?

052 エヴァ:……ねぇお兄さん、今晩私のこと買ってよ。絶対満足させるからさ。……あ、ほんと?ならちょうどよかった。……うん、うちすぐそこだから来て。……お金の話は部屋行ってからでいいでしょ?ふふ、さ、行こ。

053 ヘンリー:……っ……エヴァ……。






【別日・雨の日】


054 エヴァ:あれ、あの子……ねぇ!

055 リン:……ん?……あ、お姉さん!

056 エヴァ:こんなところで何してるの?……雨よ。

057 リン:……雨だねぇ。

058 エヴァ:家、帰らないの?風邪ひくわよ。

059 リン:……そうだねぇ。帰ら……ないとなぁ。

060 エヴァ:あんたには帰る家、あるでしょう?

061 リン:……うーん、あるんだけど……。

062 エヴァ:だけど、なに?

063 リン:リン怒られちゃってね、罰として外にいなさいって言われてるの。夜まで家に帰れないんだー。

064 エヴァ:そう……さ、行くわよ。……ほら、何ぼさっとしてるの?

065 リン:え?リン?

066 エヴァ:そう。……リン、うちにいらっしゃい。夜までに戻ればいいんでしょ。

067 リン:リン大丈夫だよ?慣れてるから。

068 エヴァ:はぁ……慣れてるとかそういうのは聞いてない。……こんなところに置いていくの気分悪いじゃない。ほら、おいで。

069 リン:……うん!ありがとう……エヴァお姉さん。


【同日】


070 エヴァ:……んっ……。

071 リン:お姉さん!……大丈夫?

072 エヴァ:あれ……リン?帰ったんじゃなかったの?

073 リン:リンが帰ろうとした時、お姉さん急に倒れたんだよ。

074 エヴァ:あれ……そうなの?……えーっと……。

075 リン:大丈夫?……あ、タオル変えるね。

076 エヴァ:ありがとう……リン手際がいいのね。

077 リン:妹の看病良くしてたからさ。慣れてるんだ。

078 エヴァ:そっか……ありがとう、リン。

<エヴァがリンの頭を撫でる>

079 リン:エヴァ……お姉さん?

080 エヴァ:えへへ……いい子、いい子。

081 リン:ありがとうお姉さん。……泣かないで?大丈夫?辛い?

082 エヴァ:んーん。大丈夫。……大丈夫。……ありがとうね。……。

083 リン:どういたしまして。……えへへ、泣かないで?

084 エヴァ:うん……ごめん……今だけ……ごめんね。

085 リン:いいよ。落ち着くまでリンがお姉さんのそばにいてあげるね。

086 エヴァ:うん。……ありがとう……リンは優しい子だね……。

087 リン:リンは優しい子じゃないよ?

088 エヴァ:いい子よ……私からすればいい子。

089 リン:そっか……えへへ、ありがとう。

090 エヴァ:うん……うん……。

091 リン:そんな撫でられたら髪の毛ぐちゃぐちゃになっちゃうよ。

092 エヴァ:あ、嫌だったよね、ごめんね。

093 リン:んーん!リン頭撫でられるの好きだから嫌じゃないよ。ありがとう。

094 エヴァ:それならよかった……。

095 リン:リンのママね、よく頭撫でてくれたんだ。お姉さんの手、ママの手みたいですごく好き。

096 エヴァ:そっかぁ……ママかぁ……。

097 リン:え、えっと、泣かないで?

098 エヴァ:ごめん……ごめんね……。

099 リン:大丈夫だよ、リンがそばに居るからね。

100 エヴァ:うん。ありがとう。






【別日・路地裏にて・演奏後】


101 リン:お兄さん今日も素敵だった!

102 ヘンリー:今日も来てくれてありがとうね、リン。

103 リン:こちらこそありがとう!最後の曲リン好きだなぁ。

104 ヘンリー:お、流石リン!僕も最後の曲好きなんだ。リンはこういう曲好きだよね。

105 リン:うん!よくパパが歌ってくれたから!

106 ヘンリー:そうなんだね。リンのお父様とは趣味が合いそうだね。

107 リン:きっと仲良くなれると思うよ!……お兄さんの歌はなんか懐かしい感じがする、ずっと聞いていたいなって。

108 ヘンリー:それは嬉しいなぁ、いつもありがとうね。

109 リン:いーえっ、どういたしまして!……そういえば、今日もお姉さん来なかったね。

110 ヘンリー:あんまり調子良くないんじゃないかな。……きっとまた会えるさ。

111 リン:そうだねぇ、早く会いたいなぁ。

112 ヘンリー:ねぇ、リン?そういえばその怪我どうしたの?

113 リン:……怪我?

114 ヘンリー:そう。……ねぇ、ちょっとこっち座って。

115 リン:……ここでいい?

116 ヘンリー:うん、ちょっと失礼するね……。

117 リン:痛っ……。

118 ヘンリー:あぁ、ごめんごめん。ねぇリン、これ、どうしたの?

119 リン:どうもしてないよ?

120 ヘンリー:リン。

121 リン:……どうもしてない。もうリン帰るね、またね。

122 ヘンリー:リン!……はぁ……なんで僕はいつも……。






【別日】


123 ヘンリー:や、やぁ、リン、久しぶりだね。

124 リン:あ!お兄さん!久しぶり!ずっと待ってたんだよー?

125 ヘンリー:その……なかなか来れなくてごめんね。

126 リン:ううん!大丈夫だよ。久しぶりにお兄さんの歌聞けるの楽しみ!

127 ヘンリー:待っててくれてありがとう。

128 リン:リンの楽しみだからね!お兄さんの歌聞くの!……ねえあの曲歌って?

129 ヘンリー:いいよ、今日はそれ歌おうか。

130 リン:うん!

<エヴァが来る>

131 エヴァ:ひ、久しぶり。

132 リン:エヴァお姉さん!久しぶり!

133 ヘンリー:やぁ、久しぶりだね、エヴァ。もう身体大丈夫なのか?

134 エヴァ:え?

135 リン:リンが話しちゃった、ごめんね。

136 エヴァ:あ、大丈夫よ。心配かけてごめんなさい。

137 ヘンリー:大丈夫ならよかったよ。まぁゆっくりして行ってね。……よし、じゃあさっそく始めるね。

<ヘンリーが歌い始める(短め)・聞きながらエヴァとリンが話し始める>

138 エヴァ:リン、どうしたのその怪我。

139 リン:転んじゃって。

140 エヴァ:本当は?

141 リン:転んで階段から落ちた。

142 エヴァ:……落とされた、の間違いじゃなくて?

143 リン:あはは、お姉さんにはバレバレだね。……あ、お兄さんには内緒だからね!この前も聞かれちゃって大変だったんだから。

144 エヴァ:わかったわかった。今日の演奏終わったら少しうちにいらっしゃい。手当しないと。

145 リン:大丈夫、大丈夫!リンおっちょこちょいだからよく怪我するし慣れっこだもん。

146 エヴァ:それが問題なんだって。

147 リン:えへへ、心配してくれてありがとうね、お姉さん。

148 エヴァ:もう……。

149 リン:本当に大丈夫。手当てなんかして帰った日にはどうなる事か。

150 エヴァ:……助けてあげられたらいいんだけど…ごめんね。

151 リン:ううん!リンはまだ外に出れるだけマシだから。大丈夫だよ、ありがとうお姉さん。

152 エヴァ:どういたしまして。

153 リン:……最近なんかお姉さん優しいね?

154 エヴァ:な、なによ。

155 リン:だって前は演奏終わったらすぐ帰っちゃってたじゃん。

156 エヴァ:それはリンもでしょう?……まぁ、こんな所で知り合いなんて作ってもしょうがないって思ってたからね。

157 リン:ふふふ……お姉さんはリンの新しい家族だよ!

158 エヴァ:……ありがとう、リン。

159 ヘンリー:その家族に僕も入れてくれるかい?

160 リン:えへへ、もちろん!お兄さんも、リンの家族だよ!

161 ヘンリー:ふふ、ありがとう。

162 エヴァ:……今日はもう終わりなの?

163 ヘンリー:今日は少し早く家に帰らないといけなくてね。色々とやらないと行けない事があるのさ。また明日来るよ。

164 エヴァ:そう。じゃあ……また明日。

165 リン:明日!絶対だからね!リンもおうち帰るよ!お姉さんもお兄さんもまたね!

166 ヘンリー:ふたりとも気をつけて帰るんだよ。……またあした。






【別日・昼間】


167 エヴァ:あら、ヘンリーじゃない。こんな真っ昼間にこんな所でどうしたの?

168 ヘンリー:エヴァ、最近リン見たかい?

169 エヴァ:いや、全然。普段この当たりを歩いてると見かけることあるんだけど……最近は見かけないわね。……まさか……。

170 ヘンリー:エヴァ、何か知ってる?

171 エヴァ:いや、確証はないんだけど……あの子多分奴隷よ。

172 ヘンリー:ど、れい?

173 エヴァ:そう。近くに大きな御屋敷あるでしょう?多分あそこの子だと思う。

174 ヘンリー:えっと、ちょっと待ってくれ、この国の奴隷制度は廃止されたんじゃ?

175 エヴァ:え?……貴方どこの国の人なの?

176 ヘンリー:えーっと……少なくともこの国の者ではないかな。

177 エヴァ:つまりワケアリってことね。まぁいいわ、私も似たようなものだし。

178 ヘンリー:えっと、そのリンが奴隷って話……。

179 エヴァ:あの家の奴隷は少し変わってるって有名でね。まず身長が低い女の子……。

180 ヘンリー:リンも小さいもんな……。

181 エヴァ:そう。あと右手の小指にシルバーのリングをしていたでしょ?あれも、あの家の奴隷がしてる物よ。

182 ヘンリー:そうだったのか……まさかあの怪我って……。

183 エヴァ:恐らく。

184 ヘンリー:そんな……どうしたらリンを助けられる?

185 エヴァ:そういう話は私には分からないわよ。


<間>


186 ヘンリー:……。

187 エヴァ:……。

<リンが来る。>

188 リン:ごめんー!遅くなったー!

189 ヘンリー:リン……その怪我どうしたの?

190 リン:えーっと……。

191 ヘンリー:転んだ、はもう聞かないよ。

192 リン:……お姉さん言ったの?

193 ヘンリー:エヴァは関係ないよ。……リン?

194 リン:お兄さんはどこまで知ってるの?

195 ヘンリー:リンがその……。

196 リン:奴隷って話?

197 ヘンリー:あ、あぁ。

198 リン:そっかぁ。知られちゃったのかぁ。ならしょうがないね。……ふふ、この怪我は、リンが悪いことしたからご主人様がおしおきって。

199 ヘンリー:リンは悪くないだろ?

200 リン:……ううん。リンは悪い子だよ。ご主人様の言いつけを守らなかった悪い子。

201 ヘンリー:そんな事ない。リンはいい子だよ。

202 リン:ありがとう、お兄さん。……でもリンは本当に悪い子だから。

203 エヴァ:……っ……ねぇ、こんなところで立ち話もなんだし……とりあえずうちに来ない?リンの手当もしないと。

204 リン:リンは大丈夫だよ。怪我も慣れてるし。

205 ヘンリー:リン、ちゃんと手当してもらいに行こう?

206 リン:……お兄さんが言うなら行く。

207 ヘンリー:じゃあ行こうか。






【エヴァの家】


208 エヴァ:……好きな所に座ってまってて。今救急箱持ってくるわね。

209 ヘンリー:うん、ありがとう。

210 リン:やっぱりお姉さん家(ち)綺麗だよね。

211 エヴァ:人様うちに上げるのに汚いままじゃね。いつも綺麗にしてんの。……はい、まずは体から拭くからね。……お兄さんちょーっとそっち向いててねー。

212 ヘンリー:あっ、ご、ごめん。

213 エヴァ:反応が可愛いわねー、ふふ。……それで?リンはどうして奴隷になったの?

214 ヘンリー:そんなストレートに聞かなくても……。

215 エヴァ:路地裏で生きる私たちに遠慮なんていらないの。それにもうここまで話したら隠すことなんてないでしょ。で、リン?

216 リン:……リンのお母さんね、リンが小さい時に出て行っちゃって、パパが1人でリンと妹育ててくれたんだけど、妹病気になっちゃってね。でも治すにはお金が無くて、それでリンがご主人様のとこに行くことになったの。

217 エヴァ:じゃあリンのパパはリンのこと売ったんだ。

218 ヘンリー:エヴァ!その言い方はないだろ。

219 リン:えへへ、いいんだよ、お兄さん。ホントの事だもん。……でもパパは迎えに来てくれるって言ってたから。いいの!大事な妹が助かるならいいんだ!

220 ヘンリー:リン、今のところにいて辛くないの?

221 リン:リンはあそこでパパのこと待ってるの。ご主人様のとこにいないとパパがご主人様に怒られちゃうもん。

222 エヴァ:あんた、助けられないなら同情なんてするんじゃないよ。

223 ヘンリー:エヴァ?

224 エヴァ:同情で救われるなら私もリンもこんなところにいない。そうでしょ?リン。

225 リン:……そうだね。お兄さんは気にしなくていいことだよ。またあそこでギター弾いて。リンもエヴァお姉さんもそれで充分だよ。

226 ヘンリー:そっ……か。ねぇ、ひとつ聞いてもいい?

227 リン:なぁに?

228 ヘンリー:2人にとっての『家族』って何?

229 リン:家族……んー。

230 エヴァ:……私にとっては失ったもの。かな。

231 ヘンリー:その写真、家族写真……だよね?

232 エヴァ:……うん。

233 ヘンリー:それ……旦那さんと息子さん?

234 エヴァ:そう。……旦那と子供。その写真は私が、1番幸せだった時の写真。

235 リン:エヴァお姉さんって子供いたんだ。

236 エヴァ:うん……2人とも事故でね。その時全部無くしちゃった。

237 ヘンリー:じゃあ娼婦って……。

238 エヴァ:私はお嫁に行くための教育しか受けてないから、お金を稼ぐ方法なんて知らないの。だから体を売るしかなかった、それだけの事よ。

239 リン:エヴァお姉さん、この子何歳だったの?

240 エヴァ:そうね……あの時5歳だったから……生きていればリンと同じくらいかしらね?

241 リン:そっかぁ……お友達になりたかったな。

242 エヴァ:……ありがとうね、リン。

243 リン:えへへ……リンにとっての家族は大好きなもの、かな!

244 ヘンリー:大好き……か。

245 リン:お兄さん?

246 ヘンリー:あー、いや、純粋だな、と思って。僕がリンくらいの歳だった頃は、もう家族のことはよく思ってなかったからなぁ。

247 リン:じゃあお兄さんにとっての家族は?

248 ヘンリー:俺にとっては……真っ黒、かな。

249 エヴァ:真っ黒?

250 ヘンリー:そう……真っ黒。僕の家、ちょっと力がある家なんだけど、そういう家は後継者がどうのとか世継ぎがどうのとか色々めんどくさいんだ。

251 エヴァ:そういえば、ヘンリーはどこの国の人なの?この国の人ではないって言ってたけれど。

252 ヘンリー:隣の国……かな。

253 リン:隣の国?なんだっけ……えーっと……て、て……。

254 エヴァ:テティス王国。

255 ヘンリー:……あはは……そう。そこの一応貴族。

256 エヴァ:へぇ……王国のお偉いさんがこんな所で何してるんだい。

257 ヘンリー:そんな警戒しないでおくれよ。……僕は家族から逃げてきたんだ。

258 リン:逃げる?

259 ヘンリー:リンが思うような暖かい家族じゃないんだ。家では嫁だ世継ぎだってそんな話ばかり。身近な人なんて平気で裏切るし。そんな世界だから、その……幸せな家族っていうのを探してるんだ。

260 エヴァ:幸せな家族……か。ふふ、私達みんな持ってないわね。

261 リン:そうだねぇ。

262 ヘンリー:そうだなぁ。……幸せな家族……か。






263 エヴァM:その後。変わらない毎日を過ごしていた私の元にとある貴族の使いがやってきた。使いの者は私に手紙を渡し去っていった。その中には指輪が入っていた。『いつもの時間にいつもの場所で、荷物をまとめてきてね』という手紙を添えて。


264 リンM:その後。御屋敷に隣の国のお偉いさんがやってきた。ご主人様とお偉いさんのお話が終わる頃、ご主人様はリンが着けていた指輪を取り上げた。お偉いさんは『おまたせ』といってリンの手を引いて御屋敷を出た。






265 ヘンリー:さて、2人とも。

266 エヴァ:あの手紙は何?……それに指輪まで。

267 リン:そ、そうだよ!リンご主人様のところに居ないと……。

268 ヘンリー:まってまって、2人とも落ち着いて。……まずはリン、君はもうあのご主人のところにいる必要はないんだ。

269 リン:どういう事?

270 ヘンリー:お父さんも妹さんも、そしてリンも、もう辛い思いをしなくていいように僕が大人の魔法をかけたんだ。

271 エヴァ:……金で解決したのね。

272 リン:お金かぁ。

273 ヘンリー:少しはカッコつけさせてくれよ……。

274 エヴァ:ふふふ、貴方らしいじゃない。

275 ヘンリー:そうかい?……そしてエヴァ、君は……送った指輪の意味は分かってくれたかい?

276 エヴァ:……いい奥さんになんてなれないわよ。

277 ヘンリー:いい奥さんになんてならなくていい。君は君のままで。……さて、2人とも……僕の本当の家族になってくれるかい?


(終)

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