【男1:女1】深愛

男1:女1/時間目安 15分


※上の画像は、ちぃ様(@____chii__x_x)が描いて下さった深愛のラストシーンです。上演の際の使用許可を頂いてますので、もし台本を使ってくださる際は合わせてお使い下さい。


【題名】
深愛
(しんあい)


【登場人物】
天使:羽が片方ない天使
画家:無名の画家
ナレーション(天使と兼役)


(以下をコピーしてお使い下さい)

『深愛』作者:なる
https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/8342498
天使(女):
画家(男):



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001 画家M:『キバナツメクサ。シャジクソウ属の1年草で道端などに生える雑草。花は受粉すると垂れ下がり、花弁は淡褐色に変わっていく。タネが熟すと枯れてしまう。』……なぜこの何ともない花を私は覚えていたのだろうか。初夏には消えるこの花を私は何故か忘れられないでいる。






002 画家M:春先の事。私はとある森を訪れた。そこに用があった訳ではない。ただ何となく、それだけだった。


<遠くで何かが倒れる>

003 画家:……?……誰かいますか?

004 天使:……痛っ……(小声)

005 画家:え?!……だ、大丈夫ですか?

006 天使:大丈夫……。

007 画家:えっ……羽?

008 天使:えっと……その……。

009 画家:と、とりあえず手当しましょうか。座れますか?

010 天使:あの、大丈夫。

011 画家:そんな怪我で大丈夫と言われても……。

012 天使:ほんとに。でも、ちょっと……。

013 画家:どうかしました?

014 天使:ちょっと、目瞑っててね。

<天使が画家にキスをする>

015 画家:えっ……あれ、傷が……。

<天使の怪我が治っている>

016 天使:ありがとう、助かったわ。

017 画家:いえ……あの、貴女は……?

018 天使:天使。

019 画家:……ん?……天使?!

020 天使:えぇ、天使よ。まぁ天使と言っても羽は片方しかないし見た目はこんなだけど。

021 画家:えーっと……。

022 天使:信じてないのね。……まぁ無理もないか……。じゃあ何か一つやって見せるわ。


023 画家N:そういうと天使と名乗る彼女はその手の上で一輪の青いバラを咲かせた。種があった訳でもない。そのバラは何も無いところから生まれた花だった。


024 天使:どう?気に入って頂けた?

025 画家:凄い……まるで魔法だ……。

026 天使:天使だもの。なんだってできるわ、ふふ。

027 画家:あの……良かったら貴女を描かせてくれませんか?

028 天使:描く?

029 画家:画家なんです。良かったら貴女の絵を遺(のこ)したい。

030 天使:構わないけど……私には時間が無いの。

031 画家:時間が無いのは私も同じです。早速取り掛からせてください。

<画家が持っていたキャンバスに下書きを始める>

032 天使:私はどうしたらいいの?

033 画家:ただそこに座っていてくれれば大丈夫。

034 天使:そう……。

035 画家:それにしても……綺麗な髪です……。

036 天使:ありがとう……そんなじっと見られるのは照れるわ。

037 画家:人を描くのは久しぶりなんです。じっと見るのは許して下さいね。

038 天使:ふふ、貴方は不思議な人ね。

039 画家:そう……ですか?

040 天使:人ならざる者相手に絵を描かせてくれなんて。ふふ、そんな人間がいたなんてびっくりだわ。

041 画家:人とか人じゃないとか、関係ないです。ただ描きたいと思ったから。それだけです。

042 天使:優しいのね。

043 画家:私が優しいかどうか決めるのは私ではありませんから。貴女がそう言うなら私は優しいのでしょう。

044 天使:あら、ふふ。面白い人。

045 画家:ところで少し聞いても?

046 天使:なに?

047 画家:その……花……。

048 天使:ふふ、これのこと?(頬の花を触る)……これは……禁忌を犯した証。

049 画家:……禁忌ですか。

050 天使:えぇ、私恋しちゃったの。人間に。

051 画家:人間に恋するのは禁忌なんですか?

052 天使:そう。空ではね、人間に恋をしていいのは神だけなの。

053 画家:それは理不尽ですね。

054 天使:それが当たり前だから理不尽に思う人なんて誰もいないわ。でも……。

055 画家:でも?

056 天使:一度してしまうと繰り返してしまうものね……。一度目は羽を片方取られたわ。

057 画家:羽ってどうやって取るんです?

058 天使:ふふ、聞いたら後悔するかもしれないわよ?

059 画家:余程のことでない限り、驚きも後悔もしませんよ。

060 天使:そう。……大きな鎌でね、根元からバッサリ切られたわ。

061 画家:魔法で消すとかではないんですね。

062 天使:私達は魔法なんて使えないわ。

063 画家:じゃあさっきのは魔法じゃないんですか?

064 天使:私達が使うのは奇跡。魔法はこの世に存在しないわ。

065 画家:奇跡……ですか。それはまた不思議なものを……それで?

066 天使:それで……って?

067 画家:繰り返すって言ったのは貴女じゃないですか。続きをどうぞ?

068 天使:あら、察しがいいのね。……二度目は輪を取り上げられたわ。

069 画家:輪?

070 天使:そう、頭の上に浮かんでるこれよ。私たちの間では、輪の光が強ければ強いほど偉いって言われていたの。

071 画家:なるほど。……その言い方だと貴女は注目の的だったのですね。

072 天使:ふふ、ご名答。これでも、とてもモテたのよ。まぁそれでヘマしちゃったんだけどね。

073 画家:それが三度目と……。

074 天使:えぇ、空を追放されたわ。

075 画家:そうなんですね。でも追放されたお陰で出会えてるので私としては嬉しいですね。

076 天使:そう…貴方は優しいようで優しくないのね。不思議な人。

077 画家:絵を描く人間は変わり者が多いらしいですよ?

078 天使:なんとなく納得がいくわね。ふふ、本当に人間は面白いわ。

079 画家:ところで、その花について、話してはいただけないんですか?

080 天使:これね……三番目に好きになった人間は植物の神が目をつけていた人間だったの。だから罰としてこの花を植え付けられた……少しずつ花は増えて、私の体を包み込んでいくの。最後には淡褐色の草になるらしいわ。

081 画家:それで時間が無い、と。

082 天使:えぇ…天使は空でなければ何も出来ない。私にもあとどのくらい時間が残されているか……。

083 画家:残された時間が少ないのは私も同じです。

084 天使:じゃあ……貴方はなぜ時間が無いの?

085 画家:お医者様が言うには、私の体は持ってあと1週間だそうで。

086 天使:1週間……それは短いの?

087 画家:絵を描くには長い時間が必要ですから……1週間は短いかもしれないですね。

088 天使:そう……。ねぇ私(※被せ)

089 画家:(※被せ)助けはいりませんよ。

090 天使:……え?

091 画家:ふふ、神に祈るのはもう辞めました。……私は最後の絵を描きにこの森に来たんです。まさか天使様に出会えるとは思いもしませんでしたが。私はラッキーですね。

092 天使:ふふ、そうかもしれないわね。

093 画家:最後の絵で真っ白な天使様を描けるなんて。画家冥利に尽きますね。

094 天使:あまり綺麗な姿でないのが申し訳ないけれど、そう言って貰えるなら嬉しいわ。

095 画家:いや、十分綺麗です。……月明かりに照らされた貴女は……この世のものとは思えないくらい美しいです。

096 天使:ふふ、ありがとう。

 
097 画家M:それっきり彼女は何も話さなかった。時間が経つにつれ、彼女の体に咲く花は少しずつ増えていった。最初に足が、その後腕が、花に包まれていった。その姿を彼女は恥ずかしいと言っていたけれど私にはとても美しく思えた。出会ってから月が6回ほど昇った頃、絵は完成した。






098 画家:出来た!……くっ!……。

<画家が倒れる>

099 天使:え……?ねぇ……。ねぇってば……。

100 画家:ちょっと頑張りすぎたかな……ふふ……ね、言ったでしょう?……画家に、1週間は短すぎる、って……。

101 天使:えぇ、言ってたわね……もうそんなに時間が経っていたなんて……。

102 画家:あっという間……だね。

103 天使:貴方が見る最後の私がこんな姿なのは……嫌だわ。

104 画家:貴女は綺麗だから、大丈夫。……羽も、髪も、触り心地がいいな……ふふ。

105 天使:天使の羽を触って、頭まで撫でた人間なんて世界のどこを探しても、きっと貴方くらいでしょうね。

106 画家:そうだね……とても貴重な、体験が出来たよ。はは……。

107 天使:……。

108 画家:天使の涙……こんなに美しいなんて……それも初めて知ったよ。最期の最後に……沢山新しいことを知ったな……。

109 天使:そうね。

110 画家:あぁそうだ……。

111 天使:……どうしたの?

112 画家:せっかく完成させたのに……こんな所に置いておいたら絵がダメになってしまう……。

113 天使:大丈夫、私が何とかするわ。だから安心して?

114 画家:何から何までありがとう……。

115 天使:ふふ、いいえ。

116 画家:ふふ……ごめん、ね。最後に、貴女を……描けてよか………。

117 天使:私に命を使うなんて……本当に不思議な人。……貴方に神の御加護があらんことを。願わくば、来世も素敵な画家になれますように。






118 N:世界には沢山の名画が存在する。そしてまた一枚、オークションで数億という高値が付けられた名画が現れた。その絵画は森の中で発見され、絵の周りには一面、黄色い花が咲いていたそうな。題名は『深愛』(しんあい)。作者は……未だ不明である。


(終)


-------- ✽ --------


Special Thanks 

ちぃ様


この台本はちぃ様の絵を元に書かせていただいた台本です。台本に興味持って頂けた方、ぜひちぃ様の絵も見てくださいまし(。ᵕᴗᵕ。)

2020/10/12


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