【男3:女2:不問1】SUIT

男3:女2:不問1/時間目安45分


【題名】
SUIT(スート)


【登場人物】
イザベル:ファミリーのボス
ベラ:『知』のクラブ
( 台詞006~010 / 404~406で未来の姿が入ります )
アリス:『愛』のハート
オリエント:『金』のダイヤ
ルワン:『死』のスペード
イヴァン:フォニーのリーダー


(以下をコピーしてお使い下さい)

『SUIT』作者:なる
https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/47510915
イザベル(女):
ベラ(不問):
アリス(女):
オリエント(男):
ルワン(男):
イヴァン(男):



-------- ✽ --------





【路地裏】


001イザベル:お前、私と一緒に来るかい?悪いようにはしないよ。

002ルワン:……イザベル様、その言い方はちょっと。

003イザベル:そうかい?えーっと……ったく。子供の扱いは苦手なんだよ。……そんな目が出来るなら大丈夫だな。ほら行くぞ!長居は無用だ!……ルワン!

004ルワン:はい、イザベル様。……失礼致します。(目の前の子を抱き抱える)

005イザベル:……今日からあんたはうちの子だ。私が絶対に護るから安心しな。






【未来・バー"イザベル"】


006ベラ:これが私達のママ、イザベル様との出会いよ。

007ベラ:えぇ、本当に偉大な人でね。

008ベラ:……さぁ?……今どうしているのかしらね。皆バラバラになってしまったから。

009ベラ:そうね……せっかくだからママの話、沢山してあげるわ。

010ベラ:今日だけ、特別よ。






【ファミリー家】


011イザベル:さ、こいつが今日からうちの子になった。みんな仲良くしなよ。

012オリエント:また変なもん拾ってきたのか。

013アリス:何?この汚いの。

014イザベル:ルワン、状況説明はお前に任せた。私は疲れたから少し寝るとする。夕食の前に起こしてくれ。

015ルワン:承知致しました。

016アリス:えぇー!!ママもう行っちゃうの?

017オリエント:まぁまぁ、アリス落ち着けって。

018アリス:やっとママが帰って来たんだよ!?1ヶ月25日10時間36分18秒ぶりに会えたのに!!

019オリエント:いや、細っ……。

020アリス:ママに話したい事いっぱいあるの!

021ルワン:……(ため息)……イザベル様。如何なさいますか。

022イザベル:うーん。じゃあ今日の夜は皆で食べよう。そこで2人とも話を聞かせてくれるか?

023アリス:……仕方ないなぁ。それでいいよ。

024イザベル:オリもそれでいいか?

025オリエント:俺は何でもいいよ。

026アリス:強がっちゃって。ホントはママにいつもの自慢話したい癖に。

027オリエント:はぁ?どの口が!ママ、ママ、ママって!良かったですねぇ、大好きなママが帰ってきて〜。ベイビーアリスちゃん〜。

028アリス:あんたに言われたくないわ!ママがいつ帰ってくるか情報部に聞きに行ってたの知ってるんだからね!!!

029オリエント:おまっ、それは!

(二人の会話を遮る様に頭を撫で回すイザベル)

030イザベル:ったく!2人とも可愛いな!帰ってきたことをこんなに歓迎してもらえるなんて、母親冥利に尽きるなぁ!

031アリス:ちょっと、ママ。髪の毛崩れちゃう〜。

032イザベル:ああ、すまないね。……ルワンもただ見てないで止めるとかしなさいよ。

033ルワン:まぁ……興味無いので。

034アリス:はぁ?!うっざー!あんたに言われたくないんだけど!真面目ぶっちゃって、ほんとうっざー!

035ルワン:キャンキャン騒ぐな。イザベル様により疲労が溜まるだろう。

036アリス:イザベル様、イザベル様って……マザコンがお義兄ちゃんとかマジ無理。

037オリエント:アリス、そこまでにしておけ。

038イザベル:アリス、ルワン、オリエント。新しい家族がまた増えたんだ。みんな仲良く、な。全員私の可愛い子供たちなんだから。

039アリス:……わかったわよ。

040イザベル:ルワンもそれでいいな?

041ルワン:仰せのままに。

042イザベル:……うん!それでよし。じゃあルワン、あと頼んだからな。

(イザベル退出・少し間)

043オリエント:それで、この生き物はどうしたんだ?

044ルワン:任務が終わったあと宿に戻っている最中にイザベル様が見つけた。綺麗な顔が気に入ったらしい。

045アリス:ふぅん……あんた、名前は?

(何も話さないベラ)

046オリエント:こいつ話せないのか?

047アリス:今回ママとあんたはどこ行ってたんだっけ?

048ルワン:ユスティア王国だが、こいつはそこの生まれじゃないみたいだ。奴隷商かなんかに捕まったんだろう。

049アリス:ふぅん。……あんた、"はぐれ" なのね。

050オリエント:こいつ名前ないのか?身元がわかるものとか。

051ルワン:そんなものがあったら初めからここには連れてきてない。……イザベル様が "ベラ" と。

052オリエント:"ベラ"、か。……よろしくな。俺はオリエント。雷のギフトを持っている。

053アリス:アリスよ。あんたは気に入らないけど、ママの頼みだから仲良くしてあげるわ。

(会話の間の沈黙)

054オリエント:順番、次お前だろ。

055ルワン:私は既に名前は伝えてある。二度手間だ。

056アリス:ふん!相変わらず感じ悪いんだから!

057オリエント:お前空気読めよ……。

058アリス:(ベラに向かって)いい?この人はものすごーく怖い人なの。気をつけなさい。

059ルワン:凶暴な女に言われたくないな。

060アリス:ほらね?……ああそうだ!この人はね、加護無しなの。神様からプレゼントを貰えなかった哀れな子!

061オリエント:アリス、言い過ぎだ。

062ルワン:別に構わん。事実だが、お前と手合わせして負けたことが無い、というのもまた事実だな。

063オリエント:お前らいい加減にしろ、子供の前だぞ。さっき仲良くしろって言われたばっかじゃねぇか。

064アリス:ふん!私は謝らないわよ。ほら、行きましょう。中を案内するわ。

(アリスとベラ退出・少し間)

065オリエント:はぁ……ったく。お前らなぁ……。






【酒場】


066オリエント:……はぁ。

067イヴァン:そんな大きなため息をついて、如何されたのです?

068オリエント:あ?誰だ、お前。

069イヴァン:私はフォニーというグループを率いておりまして。

070オリエント:あぁ、あれか。綺麗なことも汚いことも金次第で引き受ける何でも屋、だったか。

071イヴァン:イザベルファミリーの方に知って頂けているなんて光栄です。

072オリエント:……イザベルファミリーの人間だ、なんて言ったか?

073イヴァン:いえ、一言も。

074オリエント:それで機嫌の悪い俺に話しかけてきたわけだ。……何が目的だ?

075イヴァン:目的なんて何も。ただ日頃お世話になっているファミリーの方にご挨拶をしたまでです。

076オリエント:世話になってる自覚はある訳だ。

077イヴァン:これでもトップですから。メンバーのやることくらい把握してますよ。

078オリエント:それならもう少し大人しくして欲しいんだがな。

079イヴァン:あはは、耳が痛いですね。

080オリエント:まぁいい。お前の事は気に入ったから大目に見てやる。

081イヴァン:それは嬉しいお言葉ですね。

082オリエント:何かあったらいつでも連絡くれ。

083イヴァン:はい、ありがとうございます。……そちらも、何かございましたらいつでもご相談ください。……オリエント様。






【数ヶ月後・食卓】


084イザベル:さぁ、ベラ。みんなにお前のギフトを発表してやってくれ!

085ベラ:光と闇の力を借りることが出来るみたいです。

086オリエント:光と闇ってアンノウンリストに登録されてるやつじゃないか。

087アリス:具体的にはどんな事ができるの?

088ベラ:まだ光をつけたり消したりくらいしか……。

089アリス:ふん!使えないわね。

090ベラ:すみません……。

091イザベル:まぁまぁ、特訓すれば色んなことが出来るようになるから焦らなくていい。せっかくの機会だ、みんなそれぞれギフトをベラに紹介してやってくれないか。

092アリス:そこのスペードさんはギフトがないんじゃなかった?

093ルワン:かまわん。早く紹介しろ、オリエント。

094オリエント:俺かよ!……まぁいいか。……俺のギフトは雷を操る力だ。色んなものに雷を纏わせることが出来る。例えば……剣とか弓矢だな。纏わせた部分が広がることは無いから感電の心配とかは基本ない。

095ベラ:へぇ……!すごい力ですね!

096アリス:基本ないだけで、間違って部下を感電させたことなんて山ほどあるんだから。死ななかっただけマシね。

097オリエント:うるせぇな!今それ言う必要ないだろ?

098アリス:見栄なんて張るからじゃない!さ、こんなやつはほっといて私の話をするわ。私は生物の精神に干渉することが出来るの。記憶を捏造したり消したり意識を奪ったりね。

099イザベル:アリスのギフトは情報集めの時や潜入する時にとても力になるんだ、覚えておくといい。

100アリス:ママの頼みなら手伝ってあげないこともないわ!

101イザベル:ああ、頼んだよ、アリス。で、ルワンなんだがな、まだなんのギフトか分かっていないんだ。

102ベラ:分かってない、ですか。

103イザベル:ギフトがある、って兆しはあったんだがな、何か未だに分からない。

104ルワン:その分戦闘に力を入れている。何かあれば聞くといい。

105イザベル:そこらのギフト持ちじゃルワンには敵わない、うちの戦力柱だな。

106ベラ:ギフトがあっても勝てないって凄いですね……特訓お願いしたいです!

107イザベル:お、いい心がけだ。安心してクラブを任せられるな。

108オリエント:……は?

109アリス:マ、ママ?今なんて?

110イザベル:ああ、伝えてなかったか。ベラにクラブの名前を継いでもらおうと思ってな。スートの一席が空いたままも良くないしな。

111オリエント:ベラはまだ入ったばっかだろ、他に適任も居たんじゃ?

112イザベル:クラブは元々後方支援、頭脳担当だ。今いる子達はそれぞれ適しているところに所属している。それを変える気はない。

113オリエント:じゃあ今のクラブのまとめ役は?あいつがいるだろ。

114ルワン:あいつとはもう既に話が済んでいる。ベラをスートに入れることで同意を得ている。

115イザベル:オリは反対か?

116オリエント:それ、は。

117アリス:私は反対よ!クラブの所属やナンバーズになるならまだいいわ!でもクラブは!スートは!あんたなんかじゃ務まらない!

118イザベル:それを支えていくのがお前たちスートだろう。違うのか?

119アリス:それはそうだけど……違うのよ。

120イザベル:アリス。いつまでも昔のままとはいかないんだ。

121アリス:それでも……クラブのスートはお義兄ちゃんの席だもん。

122イザベル:アリス……。

123オリエント:ちょっとアリスと散歩してくるよ。……頭を冷やす時間をくれ。

124ルワン:それがいいな。早く行ってこい。……泣いても喚いても何も変わらない。

125アリス:お前にだけは……お前にだけは言われたくない!

(ギフトを発動しようとするアリス)

126ルワン:……やるのか?今は得策ではないと思うが。

127オリエント:行こう、アリス。

(アリスとオリエントが退出)

128ベラ:あ、あの。

129イザベル:ごめんな、嫌なものを見せた。

130ベラ:いえ……その、スートとかクラブっていうのは何なんですか?

131イザベル:まだ教えたことなかったか。……うちのファミリーは大まかに4つのグループに分かれていてな。『クラブ』『ハート』『スペード』『ダイヤ』の4つだな。それは聞いた事あるか?

132ベラ:はい。アリスさんがハート、オリエントさんがダイヤという事は。ルワンさんは?

133ルワン:私はスペードだ。

134イザベル:その4グループのリーダーを務めているのがスートだ。……元は最初にファミリーに入れた4人の子供の事をスートと呼んでいたんだが、いつの間にかリーダーを指すものになっていた。

135ベラ:ルワンさんはリーダーなのにずっとママのそばに居るんですか?

136イザベル:スペードは元々暗殺や諜報を得意とする隠密部隊でな。まぁルワンは特例みたいなもんだが、護衛などにつくスペードも多くいる。

137ベラ:なるほど。

138イザベル:それでな、私はお前にクラブのスートを継いで欲しいと思っている。

139ベラ:でも僕まだギフトもちゃんと使えないです。それで務まるのでしょうか。

140イザベル:ベラのギフトは絶対に役に立つ。それにお前は頭がいいから、きっと大丈夫だ。

141ベラ:でもアリスさんもオリエントさんも僕がなるのは反対のようでしたし。

142イザベル:それは、な……。

143ルワン:元々スートは私、オリエント、アリス、そしてヘンリーという男の4人だったんだ。

144イザベル:ルワン、それ以上は……。

145ルワン:仮にもこれからスートになるなら知っておいた方がいい事もあるかと。

146イザベル:そう、だな。……ヘンリーはな、任務中に事故で死んだんだ。アリスはルワンのせいでヘンリーが死んだと思っているみたいでな。何度言っても聞かなくて……だからあんな態度を。

147ルワン:アリスはヘンリーに良く懐いていてな。実の兄のように慕っていたよ。ヘンリーはオリエントの剣の先生でもあるから、まぁあの反応は妥当だろうな。

148ベラ:ルワンさんは嫌じゃないんですか?

149ルワン:私はイザベル様のお心に従うまで。イザベル様がお前が適任だと判断なされたんだからそれが正解だ。

150イザベル:ベラが適任だと思うのは変わらないがアリスのような反応も少なくはないだろう。……それでも引き受けてくれるか?

151ベラ:……はい。僕頑張ります。

152イザベル:活躍を期待しているよ、ベラ。……ルワン、ベラを頼むよ。

153ルワン:かしこまりました。……後日クラブのナンバーズに会わせてやる。ナンバーズはファミリーの中でもスートの次に偉いやつらだ、覚えておくといい。

154ベラ:はい!これからよろしくお願いします。






【酒場】


155イヴァン:おや、また会いましたね。

156オリエント:……またお前か。

157イヴァン:ぜひイヴァンとお呼びください、オリエント様。

158オリエント:俺の名前まで分かっているのか。凄いな、フォニーは。

159イヴァン:えぇ、有難いことに部下はとても優秀ですよ。そうですね、優秀さ自慢でも致しましょうか。

160オリエント:おぉ、何をしてくれるんだ?

161イヴァン:今オリエント様が悩んでおられる原因を当ててみせましょう。

162オリエント:おぉ、当たったら素直に正解と教えてやる。

163イヴァン:……新しくファミリーに加入したアンノウンのこと、ではありませんか?

164オリエント:……そこまで把握されているとは、末恐ろしいな。……正解だ。

165イヴァン:アンノウンリストは見つかり次第頻繁に更新されますから、タイミング等を加味すれば想像することなど容易ですよ。

166オリエント:そうか。

167イヴァン:そうですねぇ、余り情報を当ててしまってばかりではフェアではありませんから。私からも情報を一つお教えしましょう。

168オリエント:それは有益なものか?

169イヴァン:……使い方によっては。

170オリエント:なんだ、話してみろ。

171イヴァン:私、イヴァンは貴方のボス、イザベルの実の弟です。






【とある屋敷にて】


172アリス:もう一回確認するわよ。まず最初は?

173ベラ:リーチェに屋敷の光を奪ってもらいます。

174アリス:リーチェ?……ああその光の精霊ね。

175ベラ:はい、こちらが光の精霊のリーチェ、こちらが闇の精霊のアンです。

176アリス:ふぅん。可愛いじゃない。

177ベラ:とてもお利口なんですよ。

178アリス:そう。……話を戻すわ。光が消えたら私が警備員の意識を奪う、そのままナンバーズが突入して情報を盗む。

179ベラ:脱出後、光を元に戻す。でしたよね?

180アリス:そう。簡単な任務だから大丈夫だとは思うけど、足は引っ張らないでよね。

181ベラ:了解。

182アリス:さぁ行くわよ。スリー・ツー・ワン。






【一方その頃】


183イザベル:お前はどう思う?

184ルワン:ベラの事ですか?

185イザベル:あぁ。……あの子をスートにしたのは間違いだったと思うか?

186ルワン:そんな事はないと思いますが……そうですね、アリスとオリエントからすれば間違いだったのかもしれません。

187イザベル:あの子達を傷付けるつもりなんて無かったんだ。……ただ前を向いて欲しくて。ヘンリーに似ているあの子を見つけたのは運命だと思ったんだ。

188ルワン:イザベル様も"運命"などと仰るんですね。

189イザベル:私をなんだと思っている。……お前達を拾ったのも、ファミリーを作ったのも……イヴァンと仲違いしたのも、全部運命さ。

190ルワン:イヴァン……イザベル様の弟さんでしたっけ。

191イザベル:ああ。大きな喧嘩をしてな。それから家には帰ってこなくなった。私はどうも言葉が下手でな。きっと今でも誤解させたままなんだろうよ。

192ルワン:今彼が何をしているかご存知で?

193イザベル:あぁ。ルワンも耳にしているのだろう?フォニーというグループを率いているらしいな。

194ルワン:この辺りで色々やっているらしいですが、あまりいい話は聞きません。

195イザベル:大丈夫、お前たちは巻き込まないよ。……これはただの姉弟喧嘩だ。






【一方その頃・戻ります】


196アリス:こちらスート。状況は?

(応答無し)

197アリス:こちらスート!状況は?応答して!

198ベラ:どうかしましたか?

199アリス:中に入ったナンバーズと連絡が取れなくなったの。

200ベラ:アンに中を確認してもらいますか?

201アリス:そんな事も出来るの?

202ベラ:アンは闇に溶け込むことが出来ますから。ちょっと中を見てきてもらいますね。

203アリス:えぇ、お願い。

(少し間)

204ベラ:アリスさん!見つけました!

205アリス:何?!

206ベラ:どうやらアリスさんの力が効かなかった人間がいるみたいです。その人達に捕まってしまったようで、今中の警備隊が動いてます。

207アリス:貴方のその光の精霊を連れて中に入るわ。

208ベラ:どうするんですか?

209アリス:まだ中は暗いままだから精霊に光って貰って目くらましを狙うわ。その間に直接力を使う。近くにいればいるほど効果は出るわ。

210ベラ:分かりました!リーチェ、アリスさんについて行ってくれるかな?……うん、タイミングはアリスさんが教えてくれる、頼んだよ。






【酒場】(※アリス酔ってます)


211オリエント:おいおい、飲みすぎだぞ、アリス。

212アリス:うるさぁい!飲まなきゃやってらんないっつうのー!

213オリエント:何どうしたんだよ、酒に頼るなんて珍しい。

214アリス:ベラにさぁ!うちの子助けて貰っちゃったの!

215オリエント:それが嫌だったのか?

216アリス:嫌だった!!!絶対頼らないって思ってたのにぃ。

217イヴァン:おやおや、これはまた賑やかで。どうも、オリエント様。

218アリス:あぁ?誰あんた。

219イヴァン:失礼致しました。私はイヴァンと申します。以後お見知り置きを、美しいお嬢さん。

220アリス:ふふふ、ふふふふふふ。アリスよ、特別に名前を呼ぶ許可をあげるわ。

221オリエント:イヴァン、こんな時間にどうしたんだ?

222イヴァン:近くに用事があったので立ち寄ってみただけですよ。

223アリス:あー!あんた!ママに似てるわね!

224イヴァン:おや、分かりますか?

225アリス:目元とかそっくりだもん、娘ならわかって当然よ。

226イヴァン:アリス様の言う通り、私はイザベルの弟ですよ。

227アリス:やっぱり!そうだと思った!

228オリエント:お前ちょっと、グラスから手放せ!

229アリス:やらぁ!!

230イヴァン:おや、これ美味しいですよ。

231アリス:何ー?ちょうだい!

232イヴァン:はい、どうぞ。(小声で)大丈夫です、お酒ではありませんよ。

233オリエント:……すまない。助かった。

234アリス:ちょっとー!2人で何コソコソしてんのよ!

235オリエント:うるせ、酔っ払いが。

236イヴァン:そんなにお酒に溺れてどうしたのです?

237アリス:入ったばっかの人にヘンリーお兄ちゃんの席が奪われちゃったの。

238イヴァン:ヘンリー様と言うとファミリーのトップだった方では?……そんなにベラ様はすごい方なんですね。

239オリエント:アリス、その辺にしておけ。これ以上は

240イヴァン:アリス様はベラ様をスートの座から下ろしたい、という事ですね?

241アリス:そんなこと出来たら最初から悩んでないわよ!

242イヴァン:出来ますよ。そのためにはもちろんオリエント様にも協力して頂かなければいけませんが。

243オリエント:具体的には?

244イヴァン:簡単ですよ、何か重大な任務で失敗させれば良いのです。あのイザベルのことですから、ミスは許さないはず。それでアリス様のお悩みも解決、というわけです。

245オリエント:勝算は?

246イヴァン:オリエント様がこちら側について下さるのであれば勝率はグンと跳ね上がります。

247オリエント:なぜそこまでする?お前のメリットはなんだ。

248イヴァン:何も。私はイザベルの邪魔が出来れば、悲しむ顔が見れれば、悔しがる顔が見れれば、それでいいのです。

249オリエント:見返りに何を求める?

250イヴァン:見返りは何も。うちの部下は幾らでもお貸ししましょう。……そうですね、恐らく全面戦争になるでしょうから、生き残った部下に金貨1枚くらいあげてください。

251オリエント:お前は?

252イヴァン:姉の顔を一目見れたらそれで。

253オリエント:わかった。それで手を打とう。

254イヴァン:またお嬢さんが起きている時に続きは話しましょう。来週の同じ時間にまたここで。






【ファミリー内・会議室】


255ベラ:あの、その『イーベルフェスト』ってなんですか?

256アリス:あんたそんなことも知らないの?!

257ベラ:すみません、今まで縁がなかったもので……。

258オリエント:イーベルフェストはこの国最大のお祭りでな、うちも毎年パーティを開いてるんだ。

259ベラ:そうなんですね!楽しそうです。

260イザベル:今年もそんな季節か、早いもんだね。

261アリス:早く役割の振り分け決めましょ!

262ルワン:イザベル様、今年もパーティは実施する方向でよろしいのですか?

263イザベル:ああ、みんな楽しみにしているからね。

264ルワン:では招待客は後日ご相談すると言う事で……他は例年通りでよろしいですか?

265アリス:えぇー!違うところやりたい!今年は飾り付けがいい!

266ルワン:それはハートの役目ではないだろう。

267アリス:ママダメ?

268イザベル:私としてはどこでも構わないが……まだ雰囲気も分かっていないベラに警備任せるのはなぁ。

269オリエント:じゃあ俺が多少手伝う、それでどうだ。

270イザベル:いいのかい?

271オリエント:ダイヤは当日までほとんどやる事ないし、事前準備くらいなら、まぁ。

272イザベル:ベラもそれでいいかい?

273ベラ:はい!オリエントさん、よろしくお願いします!

274イザベル:じゃあ各々何かあれば言ってくれ。今日のところは解散。

275アリス:はーい!またね、ママ!

276イザベル:前見ないと危ないぞ!……ベラちょっといいか。

277ベラ:どうかしました?

278イザベル:いや、何かある訳では無いんだが、最近はどうだ?少しは慣れてきたか?

279ベラ:はい!皆さん良くしてくださってます。オリエントさんとルワンさんの鍛錬はいつも厳しいですがとても勉強になりますし。

280イザベル:そうか。それは良かった。

281ベラ:それに、あの路地にいた事を考えればあれより悪い事なんてないですから。

282イザベル:そうかい。

283ベラ:最近はリーチェとアンと出来ることも増えてるんです。もっとお役に立てるようになります。

284イザベル:お前独り立ちが早そうだな。

285ベラ:皆さんに遅れをとって居られませんから。同じスートとして頑張らないと。

286イザベル:そうかそうか。まぁゆっくりのんびり大きな木になっておくれよ。……さ、もう行っていい。引き止めて悪かったね。

287ベラ:いえ!では失礼します。






【イーベルフェスト当日】


288アリス:おはようママ!

289イザベル:おはよう、アリス。随分ご機嫌だね。

290アリス:うん!

291イザベル:何かいい事でもあったのか?

292アリス:うーん、ナイショ!また後でね!

293イザベル:あぁ。また後で。飾り付け楽しみにしてるぞ!

294アリス:楽しみにしててー!!

(少し間)

295オリエント:ナンバーズは各自持ち場に付いてくれ。お前たちは他のクラブの部隊と合流してくれ。

296ベラ:オリエントさん!

297オリエント:自分のやる事は終わったのか?

298ベラ:はい!終わりました。

299オリエント:こちらも大方終わったところだ。あとは入口だけだな。

300ベラ:こちらも裏口に配置したら終わりです。

301オリエント:あぁ、裏口にはもう人を置いてあるから大丈夫だ。別のところを頼む。

302ベラ:あれ、裏口は僕らの管轄では?

303オリエント:人数が余ったから余計に配置できたんだ。あと頼んだものを届けに来た行商人の対応をしないといけないからな。

304ベラ:なるほど、それならおまかせした方がよさそうですね。どこかまだ人が足りなそうなところはありますか?

305オリエント:いや、一通り人数は足りているはずだ。

306ルワン:まだ終わってなかったのか。

307ベラ:すみません!まもなく終わります!

308ルワン:そうか。まもなく始まるぞ。……持ち場を離れるなよ、オリエント。

309オリエント:は?分かってるよ。






310イヴァン:コンコンコン、来ましたよ〜。

311アリス:うるさいわね、静かに入りなさいよ。

312イヴァン:まぁまぁ、ここで少しくらい大きな声を出しても気づかれませんよ。街中は言葉通りのお祭り騒ぎですし。

313オリエント:早く入れ。……こちらの手筈は整っている。

314イヴァン:こちらも大丈夫ですよ。

315オリエント:いいか、アリス。これから何かトラブルがあってもお前は役目を果たすこと、いいな。

316アリス:な、何よ改まって。分かってるわ。

317イヴァン:大事なことですよ。トラブルが起きてもちゃんと役目を果たすというのは。

318アリス:あんたまで……よくわかんないけど分かったわ。

319オリエント:イザベル様は今メインホールにいる。紛れ込むなら今しかない。

320アリス:えぇ、急ぎましょう。

321ルワン:招かれざる客を連れてどこに行くつもりだ。

322アリス:ルワン!何であんたここにいんの?

323ルワン:私が気づかないとでも?

324イヴァン:ふふふ……あはは!!!さすがですね、死のスペード様。

325ルワン:その名で私を呼ぶのは同業者だけだ。……何用だ。

326イヴァン:私は姉とイーベルフェストを楽しみに来ただけですよ。

327ルワン:こちらは裏口だ。お客様は正面から入るように伝えているはずだが。

328イヴァン:正面から入っても良いので?

329ルワン:招待客であればな。

330イヴァン:お堅いですねぇ。

331ベラ:あの……。

332オリエント:お前なんでここに!

333ベラ:あれ、皆様お揃いですか?そちらの方は……

334イヴァン:貴方がベラ様ですか。初めまして、イヴァンと申します。

335ベラ:どうも。

336ルワン:何用でここに。

337ベラ:イザベル様がお呼びです。その……皆様を連れてメインホールに、と。

338イヴァン:それは私も?

339ベラ:はい、恐らく。

340イヴァン:来ることもお見通しということですか。……いけ好かない女だ。

341ルワン:じゃあ行こうか。……我らがボスがお待ちだ。






342イザベル:……久しぶりだな、イヴァン。

343イヴァン:やぁ、姉さん。会えて嬉しいよ。

344イザベル:今までどこで何してたんだ。

345イヴァン:姉さんの邪魔をするためにフォニーってグループを作ったんだ。偽善者の姉さんとは違ってちゃんと人助けしてるよ。どうだい?自慢の弟だろう。

346アリス:ちょっとあんた!ママを偽善者とは何様よ!

347オリエント:静かにしてろ、アリス。

348アリス:だって!あいつが!

(イヴァンを指さすアリス)
(アリスの真横に移動するイヴァン)

349イヴァン:あいつが、何だって?

350アリス:え……?なんでここに……?

351イヴァン:ちょっと煩すぎだよ、お嬢さん。

(アリスの腹にナイフを刺すイヴァン)

352アリス:……え?

353イヴァン:死にはしないから。ちょっと静かにしててね。

354オリエント:お前……!話が違うだろう!

355イヴァン:何が?僕はファミリーを壊すのを手伝うと言っただけで、可愛いアリスちゃんに手を出さないとは言ってないなぁ。

356オリエント:この……!

357イヴァン:相手の力も分からないのに突っ込むのが最強のスート様のやる事か、よ!!!!

(イヴァンがオリエントを蹴り飛ばそうとするのをルワンが止める)

358ルワン:そこまでにしておけ。私が相手になろう。

359イヴァン:ほほぉ?スペード様がお相手ですか。それは気合いが入っちゃうなぁ!!!

(少し間)

360イザベル:ベラ。目くらましできるか?

361ベラ:リーチェとアンがいれば出来ますが……どうするのですか?

362イザベル:私の決心がついたのさ。あのバカな弟を止めよう。手伝ってくれるか?

363ベラ:……はい!

364イザベル:じゃあ頼むよ。

365ベラ:アン、あの人に闇の雲を頼めるかい?

366イザベル:屋敷の光を奪うんじゃないのか?

367ベラ:特訓したんです。こんなことも出来るようになったんですよ。……アン、頼んだよ。

368イヴァン:うわっ!!!なんだ、何も見えないぞ!おい!!!

369イザベル:凄いじゃないか!ベラ!

370ベラ:まだ見ててください、次はリーチェの番です!

371アリス:……手を貸すわ。

372ベラ:アリスさん?!

373アリス:その子、まだちゃんと力を使えないんでしょう。……本当に短い時間しか力は使えないと思うから、タイミング合わせるわよ。

374ベラ:……はい!合わせます!

375アリス:ふん!言うようになったじゃない。……行くわよ、スリー・ツー・ワン!……今よ!

376ベラ:リーチェ今だ!

377イヴァン:なんだ!うわっ、眩しっ!くっそ!!!

378イザベル:イヴァン。……終わりにしよう。

379イヴァン:あはは、姉さん、ついにその力を使うんだね。

380イザベル:私はお前の姉だから。お前のことを止めないといけない。

381イヴァン:そう。じゃあやりなよ。……人の人生のエンドを決めるその力で。

382イザベル:もう少し姉弟らしくしたかったよ。

383イヴァン:僕が最初の人間になるわけだ!これで姉さんは僕のことを忘れられないね。

384イザベル:……あの世で会おう、イヴァン。(※遮る)

385ルワン:(※遮る)イザベル様!!!

386イザベル:え?

387イヴァン:大嫌いだったよ、姉さん。

(イザベルに向かって飛んできたナイフをルワンが受ける)

388イザベル:ルワン……?

389ベラ:僕医者を呼んできます!

390イザベル:おい、ルワン。ルワン!!

391ルワン:油断禁物と、あれほど、言ったじゃないですか。

392イザベル:喋るな、傷が!

393ルワン:私は、大丈夫、です、から。

394イザベル:大丈夫なわけないだろう!……ちょっと、しっかりしろ!!!

395ルワン:ちょっと、休みます、

396イザベル:ルワン!!!

397アリス:ママ、ルワンが。

398イザベル:なんか光って……おい、しっかりしろ、ルワン。

399ルワン:ん……何ですか、休むって言ったじゃないですか……。

400イザベル:あはは、あははは!こんなところでギフトが分かるなんて、たまったもんじゃない。

401アリス:ちゃんとあるじゃない、ギフト。

402イザベル:でももう二度と、私を庇って死ぬようなことはするな!いいな。

403ルワン:分かりましたよ、イザベル様の仰せのままに。






【数年後】


404ベラ:今はねぇ、みんなバラバラよ。アリスちゃんは最後まで謝ってたわね。

405ベラ:あぁ、イザベル様とルワン?……さぁ、今どこで何してるんでしょうね。

406ベラ:ルワンは死ぬまで守るって言っていたから……その約束を守ってるんじゃないかしらね。


(終)



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※こちらの台本は『GIFTed』の過去編にあたります。もしこの台本を読んでご興味持って頂けましたら、ぜひお読みください↓

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