【男2:女2】薫りに縋って
男2:女2/時間目安60分
【題名】
薫りに縋って
(かおりにすがって)
【登場人物】
園田りり花(そのだりりか):愛香症を患う。
相澤仁菜(あいざわにな):ぬいぐるみ症を患う。
八木恭介(やぎきょうすけ):りり花の高校の時の同級生。
小野光翔(おのあきと):仁菜の主治医。
【台本に入る前に少し基本説明】
*愛香症(あいこうしょう)
愛情を抱くと体からいい香りを発する病。自分の体から発しているため、本人は知覚できない。
*ぬいぐるみ症
発作を起こすとぐったりとその場にへたり込んでしまう。誰かに抱きしめてもらえるまで元に戻れない。
(以下をコピーしてお使い下さい)
『薫りに縋って』作者:なる
https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/15438639
園田りり花(女):
相澤仁菜(女):
八木恭介(男):
小野光翔(男):
-------- ✽ --------
【病院】
001 光翔:お邪魔します。
002 光翔M:こうして仕事前の空いた時間に彼女の様子を見に来るのも日課になっていた。
003 光翔:仁菜ちゃん。おはよう。
004 仁菜:……。(返事がない)
005 光翔M:この病室には奇病の患者が入院している。……相澤仁菜。ぬいぐるみ症を患っており、半年ほど前、病気が悪化した事により運び込まれた。
006 光翔:仁菜ちゃん?
007 仁菜:……ん?
008 光翔:おはよう。
009 仁菜:あぁ、おはようございます、先生。
010 光翔:それ……手に持ったまま寝たの?
011 仁菜:え……あっ、ご、ごめんなさい。
012 光翔:あぁ、謝らなくていいんだよ。
013 仁菜:……はい。
014 光翔:不安だった?
015 仁菜:その……眠れなくて。
016 光翔:いいんだよ、少しづつ慣らしていけば。
017 仁菜:……はい。
018 光翔M:彼女の手にはシルバーのネックレスが握られている。紐が切られたそのネックレスは彼女の心も断ち切ってしまった。……こうなる前に気づけていれば……そう後悔してももう遅い。
◇
【半年前・自宅】
019 りり花:あぁ〜今日も仕事かー。嫌だなー。
020 仁菜:ふふ、頑張ってね。
021 りり花:仁菜は今日病院の日だっけ?
022 仁菜:うん、定期検診。
023 りり花:仁菜も、頑張ってね。
024 仁菜:ありがとう。
025 りり花:じゃあ行ってきます。何かあったら連絡して。
026 仁菜:はーい。行ってらっしゃい。
(間)
【診察室】
<扉が空く>
027 光翔:どうぞ〜。
028 仁菜:よろしくお願いします。
029 光翔:はい、お願いします。荷物はそこの籠にどうぞ。
030 仁菜:はい。
031 光翔:ちょっと久しぶりだね、最近調子はどう?
032 仁菜:……まぁまぁ、です。
033 光翔:それは、まぁまぁいい方?それとも悪い方?
034 仁菜:悪い方、です。
035 光翔:そうかそうか。……ここ最近大きな発作とかは?
036 仁菜:……この前……その、えっと……。
037 光翔:いいよ、ゆっくりで。何か飲む?
038 仁菜:あ、いや、大丈夫です。すみません。
039 光翔:……仁菜ちゃん、こっちのベッド座ろうか。
040 仁菜:え?
041 光翔:ほら、こっち。いつもみたいに座って。
042 光翔:(近くにいた看護師に向かって)毛布とお茶、用意してもらってもいいですか?……はい、お願いします。……こっちの方がリラックスして話せるでしょ。
043 仁菜:あぁ、すみません。ありがとうございます。
044 光翔:さて、じゃあまずは前の発作のこと聞いてもいい?
045 仁菜:はい……この前、りりちゃんが、その……出張、行ったんです。
046 光翔:仁菜ちゃんの恋人さん……だったよね?
047 仁菜:はい。
048 光翔:どのくらい出張に?
049 仁菜:2週間、大阪に。
050 光翔:2週間も?……ぬいぐるみ症の人がパートナーとそんなに長く離れてるのは……。
051 仁菜:(割り込むように)大丈夫でした、から。
052 光翔:はぁ……仁菜ちゃん、僕に嘘をつくのは違うでしょ?
053 仁菜:……っ。
054 光翔:先生相手に嘘をつくんじゃありません。……大丈夫じゃなかったから、そんな顔、してるんだよね。
055 仁菜:先生には隠し事出来ないなぁ。……3日。記憶が無いんです。
056 光翔:恋人さんは?
057 仁菜:土曜日に1度戻ってきてくれる予定だったんですけど、会社の付き合いで帰るの日曜日になりそうって連絡貰って。……『そっち残りなよ、観光でもしておいで。』って言っちゃって。
058 光翔:なんで……。
059 仁菜:迷惑……かけたくなかったから。
060 光翔:恋人さんも分かっててお付き合いしてるんだよね?
061 仁菜:はい。それでも……私がりりちゃんの荷物になっているのは間違いないですから。
062 光翔:3日記憶がないって言ってたけど、そこ詳しく聞いてもいい?
063 仁菜:火曜日は元々仕事が休みで家にいたんですけど、夕方頃突然眠気に襲われてベッドに行った所までは覚えてます。……その後は、りりちゃんが起こしてくれるまで記憶が無いです。
064 光翔:発作の後はどうした?
065 仁菜:貰っていた薬を飲んでました。落ち着くまでは家に。りりちゃんが看病してくれて。
066 光翔:今は、調子悪いとかは?
067 仁菜:寝不足くらいで、あとは大丈夫です。仕事も普通にいけるくらいには戻りました。
068 光翔:そっか……じゃあ今日はいつもと同じ薬に加えて毎日飲むタイプの薬も出しておくから、来週また来てくれる?
069 仁菜:来週ですか?分かりました。
070 光翔:様子を見つつちょっと話を聞こうかなと思って。来週ちょっと長めに予約取るからね。
071 仁菜:なるほど……ありがとうございます。
072 光翔:いいえ。……仁菜ちゃん。
073 仁菜:……はい?
074 光翔:恋人さんに迷惑をかけたくないのは分かる。でもそれで無理を続けたら、壊れるのは仁菜ちゃんだからね。……僕には幾らでも迷惑かけていいってことは覚えておいて。そのために僕達はいるんだから。
075 仁菜:はい。ありがとうございます。
076 光翔:そう!そうやって、仁菜ちゃんは笑ってる方がいいよ。
077 仁菜:な、なんですかそれ。
078 光翔:そのままの意味だよ。昔から診てるからね、顔を見ればある程度の事は分かるよ。今は、話して少しスッキリした顔。……はい、どうぞ。診察終わりの飴。
079 仁菜:子供扱いしないでくださいよ。
080 光翔:出会った時はこーんなだったでしょ?
081 仁菜:そんなに小さくないです!おじさんみたいなこと言わないでください。
082 光翔:もう十分おじさんだよ?
083 仁菜:小野先生はまだお兄さんですよ。世の中のおじさんに怒られちゃいますよ。
084 光翔:あはは、そうだね。……よし、じゃあ今日の診察はおしまい。また来週ね。
085 仁菜:はい。ありがとうございました。
◇
【外】
086 りり花:まさか、またこうやってあんたに会うことになるとはなぁ。
087 恭介:いやぁ、まさか大阪で会うとはなぁ。運命じゃね?
088 りり花:運命かどうかはさておき、2社合同の飲み会で元同級生に会う、っていうのはすごい確率だとは思う。
089 恭介:あはは、その辛口な感じ懐かしいな〜。な、いんちょー。
090 りり花:いい加減 いんちょー って呼ぶのやめなよ。学生じゃあるまいし。あの時も恥ずかしかったんだからね?急に、「あ、いんちょーじゃん。」って。なによ。
091 恭介:何だよ、親しみがあっていいだろ?
092 りり花:はいはい、そうですねー。
093 恭介:はっ、可愛くないやつ。
094 りり花:煩い。そういう事言うと、モテませんよ〜。
095 恭介:はぁ?そういうお前こそ。彼氏出来たのかよ。
096 りり花:あー、いるよ。……恋人。
097 恭介:……は?
098 りり花:何。
099 恭介:あの、年齢イコール彼氏いない歴だったいんちょーに恋人……?
100 りり花:うん。
101 恭介:マジかー。
102 りり花:残念でした。
103 恭介:で、どんな人?
104 りり花:んー、可愛い、かな。
105 恭介:猫か犬ならどっち?
106 りり花:んー、2択なら犬だけど……クマ、かな。
107 恭介:……クマ。
108 りり花:うん、私のぬいぐるみ。
109 恭介:……うん、全然想像つかないけどまぁいいや。その人との馴れ初め教えてよ。
110 りり花:馴れ初めかぁ。……出先で、体調不良で座り込んでたところを看病したのが最初かなぁ。
111 恭介:やば……。
112 りり花:何、その顔は。
113 恭介:いや、そういうイベントからカップル誕生とかって本当にあるんだなと思って。
114 りり花:お互い似た者同士だから気が合ってね。そういうのもあったんだと思う。
115 恭介:へー。色っぽくなりやがって。
116 りり花:お口が悪いですよー。
117 恭介:まさかあのいんちょーが香水とか付けてくるとはなぁ。オシャレになっちゃってさ。
118 りり花:香水?
119 恭介:してるだろ?
120 りり花:あー……うん、まぁ。
121 恭介:なんだその反応。
122 りり花:気にしないで。……ちなみに、どんな匂い?
123 恭介:え?……えーっと、なんか甘い感じの匂い、かな。これって細かく言えないけど。
124 りり花:ふーん。……そっか。
125 恭介:なんだよ。
126 りり花:何でもない。……で?腐れ縁の君は私に何か用でもあったの?
127 恭介:いや、久しぶりに連絡しただけ。
128 りり花:あはは、何それ。
129 恭介:まぁいいじゃん。久しぶりに、腐れ縁の俺と、お茶しようよ。
130 りり花:新手のナンパですか〜?
131 恭介:まぁそう言うなって。ほら行くぞ、りり花。
◇
【自宅】
132 りり花:仁菜ー、ちゃんと薬飲んだ?
133 仁菜:うん。ほら、今日のもバッチリ。
134 りり花:ほんとだ。そのケース、まだ使ってたんだね。
135 仁菜:うん。サイズも丁度いいし、可愛いし。それに、りりちゃんから貰ったやつだからね。
136 りり花:いちいち入れ替えるの面倒じゃないの?
137 仁菜:全然!病院の白い袋ってなんか気分上がらないじゃん?このケースはりりちゃんから貰ったやつだし、これ持ってるだけで気分が上がるから。
138 りり花:そっか。ならあげたかいがあったなぁ。
139 仁菜:可愛いケースをありがと。
140 りり花:いーえ。それあげたのいつだっけ?
141 仁菜:んーと、付き合う前だったかな。
142 りり花:もう……2年?
143 仁菜:そのくらいかも。
144 りり花:あっという間だなぁ。……いつもありがとうね、仁菜。
145 仁菜:ふふ、こちらこそ。
146 りり花:あぁ、そういえば仁菜何か言うことあるって言ってなかった?
147 仁菜:あー、明後日の病院の事何だけど……。
148 りり花:(小声)そういう事か……一緒に行こうね。
149 仁菜:え、でも予定は……?
150 りり花:大丈夫、空けてあるよ。
151 仁菜:そ、っか……(ホッとしたように)
152 りり花:明後日、ちょっと時間長めみたいだし、ゆっくり過ごそうね。
153 仁菜:……うん。……あの、りりちゃんは、さ。
154 りり花:ん?
155 仁菜:りりちゃんは病院行かないの?
156 りり花:私?……どこも悪くないけど。
157 仁菜:愛香症は?
158 りり花:あー、でも生活に支障はないからね。
159 仁菜:そう?
160 りり花:うん。別に好きが漏れても特に影響ないから。逆に有難いよ?変な子犬は寄ってこない。
161 仁菜:ふふ、りりちゃんらしいや。
162 りり花:こうやって仁菜とお喋りしてる時間が一番幸せ。
163 仁菜:……うん、私も。
164 りり花:仁菜?
165 仁菜:(少し食い気味で)りりちゃん明日の予定は?
166 りり花:明日は昔の友達と遊んでくるよ。
167 仁菜:……そっか。
168 りり花:どうかした?
169 仁菜:んーん。りりちゃんと見ようと思って映画借りたの。明日休みとしか書いてなかったからてっきり家にいると思って。
170 りり花:あぁ、ごめん書き忘れてた。
171 仁菜:大丈夫大丈夫!ニィが確認すれば良かっただけだから。
172 りり花:ちなみに何借りたの?
173 仁菜:2人で見ようって言ってたけど見れなかったやつ。
174 りり花:どれだ……?
175 仁菜:秘密。
176 りり花:えぇ〜。
177 仁菜:あとでのお楽しみ、ね。
178 りり花:明日見るんでしょ?
179 仁菜:うーん……明日夜更かしして見ようかな〜。
180 りり花:じゃあ早く帰ってくるね。
181 仁菜:うん、明日は一緒に夜更かししようね。
182 りり花:じゃあ今日は早く寝ないとだな〜。
183 仁菜:そろそろ寝る?
184 りり花:うーん。……ふふ。
185 仁菜M:りりちゃんは笑顔で私を押し倒し、ひとつキスをした。
186 りり花:ふふ、もうちょっと起きてよ?
187 仁菜:……わかった。
188 仁菜M:この後りりちゃんに沢山愛された私は、そのままりりちゃんの腕の中で意識を手放した。闇に落ちる寸前、りりちゃんからは、いつもと違う香りがしていた。
◇
【外】
189 恭介:なぁー。なんでそんなボケーッとした顔してんの。
190 りり花:は?そんな顔してないし。
191 恭介:してる。なに、考え事?
192 りり花:うーん、まぁ考え事。
193 恭介:なんだ、言ってみ。ほれ。
194 りり花:……八木はさ。
195 恭介:おう。
196 りり花:なんで最近こんなに誘ってくれるの?
197 恭介:……え?そんな事考えてたわけ?
198 りり花:まぁ。
199 恭介:そっか、真面目なところ相変わらずだな。
200 りり花:うるさい、それで、答えは?
201 恭介:うーん……一緒にいて楽しいから。
202 りり花:それだけ?
203 恭介:遊んだりするのにそれ以上の理由いる?
204 りり花:んまぁ、たしかに。
205 恭介:いちいち理由つけて遊んだりするの面倒すぎるだろ。まぁ女の子と遊ぶ時はそれにプラス下心だな。
206 りり花:サイテー。
207 恭介:俺らしくていいだろ?
208 りり花:それは言えてる。八木は絶対純度100%じゃないもん。
209 恭介:うるせぇよ。安心しろ、お前に下心はない。
210 りり花:あったら困るから。
211 恭介:再会の仕方は少女漫画のようだったからなぁ、もう少しトキメキがあっても良さそうだけどなぁ。
212 りり花:まさかね、出張先であんたに会うとは。
213 恭介:そんなイベント起きてもときめかないとはなー。
214 りり花:ときめかないで。私恋人いるんだから。
215 恭介:そうそう、その恋人の事もう少し聞かせてよ。この前はぐらかしたじゃん。
216 りり花:何から聞きたいの。聞いた質問に答えてあげるよ。
217 恭介:じゃあ……年齢は。
218 りり花:同い年。
219 恭介:何してるの、仕事は?
220 りり花:ショッピングモールの雑貨屋さんで働いてる。
221 恭介:馴れ初めは?出会いは聞いたけどその後。
222 りり花:助けたあと連絡が来て、お礼がしたいからってご飯に行って。そこからちょくちょくご飯行くようになって、って感じかな。
223 恭介:ほぉ〜そいつやるなぁ。なかなかいい男じゃん。
224 りり花:ん?女の子だよ?
225 恭介:……え?まじ?
226 りり花:うん。あ、言ってなかったか。
227 恭介:いや……まじか……え、いんちょー高校の時好きだったやつ男だったよね?
228 りり花:うん。私は両方いけるタイプ。
229 恭介:そっか。……大変じゃねぇの?その……そういう時とか。
230 りり花:あはは、サイテー。そういうのは百合でロマンを持っておきなさいよ。
231 恭介:あ、はい。
232 りり花:あはは!……ほんと、八木と話すの楽だわ。
233 恭介:それは普通に嬉しい。けど、その恋人ちゃん?と話すのもまたいいんだろ?
234 りり花:聞くだけ野暮、と言いたいけど。
235 恭介:さて、その部分も聞こうか。
236 りり花:仁菜……あぁ、彼女ね。……仁菜といる時は、私は彼氏でいなくちゃいけないの。でも、彼氏って逆だからさ。
237 恭介:まぁそうだよな。いつもは彼女側だもんな。
238 りり花:そう。その……役割?っていうの?を守らなきゃいけないから。難しいんだよね。その役目を担っていくのは。
239 恭介:おう。
240 りり花:でも、……でもね、あの子には私しかいないって言う安心感は、もう他では手に入らないと思うの。
241 恭介:それは何故?女の方が簡単に手放すと思うけど。
242 りり花:仁菜はね、ぬいぐるみ症っていう病気なの。知ってる?
243 恭介:いや、聞いたことないけど。
244 りり花:ぬいぐるみ症って、まぁ簡単に言うと、調子が悪くなると動けなくなっちゃうの。で、それを治すには抱きしめてあげなきゃいけない。
245 恭介:それがいんちょーである必要はないんだろ?
246 りり花:いや……それがね、まぁちょっと難しい話にはなるんだけど……ぬいぐるみ症の人にネックレスとかを贈ってしまうと、その贈られた人以外受け付けなくなっちゃうの。
247 恭介:えーっと。つまり、いんちょーがその恋人ちゃんに既にネックレスをプレゼントしてるから、いんちょーは恋人ちゃんから離れられない、ってこと?
248 りり花:うん。そういうこと。仁菜を治してあげられるのは私しかいない。それが苦しくもあるけど心地いいんだよね。絶対離れないもの、っていうか。
249 恭介:そ、っか。
250 りり花:ふふ、暗い話はこの辺にしようか。
251 恭介:なぁ、俺にしないか?
252 りり花:……は?
253 恭介:だから。付き合うの俺にしないか?
254 りり花:いや、さっきの話聞いてた?
255 恭介:聞いてたよ。聞いてる上で言ってる。
256 りり花:……訳わかんない。
257 恭介:そんな事考えながら付き合うっておかしいだろ。もっとフランクでいいと思うけど。
258 りり花:何それ。
259 恭介:りり花は考えすぎ。もっと楽に生きなよ。人の人生背負って生きるのはまだ早すぎんじゃない?
260 りり花:そっかぁ、早すぎるか……。
261 恭介:俺はそう思うけどね。
262 りり花:本気にしちゃうよ?
263 恭介:してくれた方が嬉しいかな。
◇
【病院】
264 光翔:一通り僕が聞きたいことは聞けたから、次は仁菜ちゃんの番。何か言いたいことない?
265 仁菜:えっと……特には。
266 光翔:本当に?
267 仁菜:……はい。
268 光翔:ふふ……じゃあなんでネックレスをずっといじってるの?
269 仁菜:……え?
270 光翔:話してる最中ずっと触ってるし、さっきから1回も目を合わせてくれない。そういう時は何かあったってこと。しかもそのネックレス関連で。違う?
271 仁菜:さすが先生。
272 光翔:何年仁菜ちゃんの主治医やってると思ってるの。
273 仁菜:えへへ。……このネックレスをくれたりりちゃん、多分好きな人がいるんです。
274 光翔:それは、なんでそう思うの?
275 仁菜:先生なら分かるかな。りりちゃん愛香症なの。
276 光翔:愛情を抱くと身体からいい匂いを発する病気……であってる?
277 仁菜:それです。……だから、多分間違いない。
278 光翔:勘違いという事は?
279 仁菜:抱きしめられた時、恋人からいつもと違う匂いがするんです。私を思った匂いより、少し重くて苦い匂い……別の人を思った匂いに包まれる私の気持ちが分かりますか?勘違いだって……。
280 光翔:もういいよ、僕が悪かった。
281 仁菜:先生?……私はどうしたらいい?……このネックレスさえ無ければ、りりちゃんを縛らずに済むのに。……ねぇ先生、これ切ってよ。お願い、切って。
282 光翔:僕は先生だから、それは出来ない。
283 仁菜:なんで?……切ってよ……お願い。
284 光翔:仁菜ちゃん、他に道を探そう?ネックレスを切る以外で。ネックレスを切っても何も変わらないよ。
285 仁菜:あっ……そう、ですよね。すみません。
286 光翔:いや、僕こそちょっと突っ込みすぎたね。ごめんね。
287 仁菜:いえ、大丈夫です。
288 光翔:今日は色々話してもらって疲れたと思うし、ゆっくり過ごしてね。
289 仁菜:はい。
(間)
【帰り道】
290 りり花:お疲れ様、仁菜。荷物持とうか?疲れたでしょ。
291 仁菜:ううん。大丈夫だよ。
292 りり花:そう?無理しちゃダメだからね。
293 仁菜:うん。ありがとう。長く待たせちゃってごめんね。
294 りり花:いや、待つのは全然大丈夫だよ。でも今日は長かったね?
295 仁菜:うん、検査と問診と両方だったからね。
296 りり花:そっか。
297 仁菜:あ、薬貰ってから帰らないと。
298 りり花:じゃあ仁菜が薬貰ってる間、いつものカフェで席取って待ってるよ。
299 仁菜:分かった。今日はお買い物する?(※被せ)
300 恭介:(※被せ)あれ、いんちょーじゃん。
301 りり花:え……八木じゃん。こんな所でなにしてるの?
302 恭介:買い物の帰り。いんちょー、そのかわい子ちゃんは?
303 りり花:あぁ、こちら仁菜。私の彼女。
304 仁菜:初め、まして。
305 恭介:初めまして、仁菜ちゃん。俺のことは恭介って呼んでね。
306 仁菜:え、えっと。
307 りり花:ほら、仁菜が困ってるでしょ。
308 恭介:ごめんね、仁菜ちゃん。
309 仁菜:あ……いえ。
310 りり花:この八木ね、私の高校の同級生なの。3年間同じクラスの腐れ縁。
311 恭介:仁菜ちゃんがいんちょーの彼女なのかぁ。可愛い彼女捕まえたじゃん。
312 りり花:でしょ?うちの仁菜に手出したら許さないからね。
313 恭介:そんな事しないよ。……仁菜ちゃん今度俺とデートしようよ。
314 仁菜:へ?
315 りり花:ちょっと、話聞いてた?!
316 恭介:聞いてたよ。聞いてた上で誘ってる。
317 りり花:全く……相手にしなくていいよ、仁菜。
318 仁菜:……う、うん。
319 りり花:……仁菜?
320 仁菜:りりちゃん、ニィ薬貰ってくるね。おふたりでごゆっくり。……失礼します。
<仁菜が立ち去る>
321 りり花:あっ、仁菜!……やっちゃった……。
322 恭介:俺余計な事した?
323 りり花:ううん。私が間違えたの。
324 恭介:間違えた?
325 りり花:仁菜が自分の事をニィって言った時は私が何か間違えた時なんだ。
326 恭介:なんだそれ。……めんどくさ。
327 りり花:そう言わないでよ。
328 恭介:俺ああいう女無理。なんか、いちいちそういうこと考えながら付き合わなきゃいけないなんてだるくない?
329 りり花:慣れ、かな。
330 恭介:そんなのに慣れるのなんて俺はごめんだね。まぁ仁菜ちゃんもああ言ってたし、今日はとことん話聞いてやるからさ。そこのカフェ行くか?
331 りり花:うーん。違う所にしよ。……あそこはイヤ。
(間)
【自宅前】
332 恭介:あれ、仁菜ちゃん?
333 仁菜:あ、八木さん……先程はどうも。
334 恭介:随分と遅い帰りだね。
335 仁菜:のんびりしてたら遅くなってしまって。
336 恭介:そうか。……君、りり花の恋人何だってね。
337 仁菜:……はい。
338 恭介:別れてよ。
339 仁菜:え?
340 恭介:気付いてるんだろ?りり花の好きな人は俺だって。
341 仁菜:……っ……。
342 恭介:俺もさ、りり花の事好きなんだよ……高校の時からずっと。
343 仁菜:そう、ですか。……でも(※被せ)
344 恭介:(※被せ)ネックレスだろ?厄介だよなぁ。このネックレス切っちまえよ。
345 仁菜:……へ?
346 恭介:大丈夫、この繋がってるうちの1つを切れば簡単に取れるから。
347 仁菜:そ、んなこと。
348 恭介:何がりり花のためなのか、考えたら?
349 仁菜:あ……。
350 恭介:(舌打ち)……面白くねぇやつ。じゃあな、仁菜ちゃん。
(間)
【自宅】
<仁菜が帰宅。扉が開く>
351 りり花:あ、仁菜。遅かったね。おかえり。
352 仁菜:……ただいま。
353 りり花:仁菜……何かあった?
354 仁菜:ううん、何も無いよ。ちょっと疲れちゃったから部屋で休むね。
355 りり花:仁菜。
356 仁菜:っ……何?
357 りり花:流石に仁菜の様子がおかしいのは私でもわかるよ。ちゃんと話しよう?
358 仁菜:…………だ。
359 りり花:え?
360 仁菜:………やだ。
361 りり花:何で?
362 仁菜:ニィに何も言わずに、ニィとりりちゃんのお家に別の……男の人を連れ込むりりちゃんとなんて、何も話すことない。
363 りり花:なんでそんなこと言うの。
364 仁菜:事実でしょ?……もういいよ……嫌いになったならちゃんと言ってよ。
365 りり花:何の話?
366 仁菜:りりちゃんは知らないと思うけど、りりちゃん……出張から帰ってきてから変わったよ。
367 りり花:何が変わったの。はぐらかさないで。
368 仁菜:なんでりりちゃんがイライラしてるの?
369 りり花:仁菜が(※被せ)
370 仁菜:(※被せ)ニィが悪いの?全部全部、ニィが悪いの?
371 りり花:え……?
372 仁菜:りりちゃんがお休みにお友達と会うようになったのも、今まで誰も入れたこと無かったこの部屋に男連れ込んだのも、りりちゃんから違う匂いがするのも、全然ニィが悪いの?
373 りり花:友達に会うのはお互い了承の上でしょ?
374 仁菜:……そうだね。でも……私との先約を変えてまで友達に会うのを了承した覚えなんてないよ?……そういう時の相手が八木さんだって事も。
375 りり花:なんで、知ってるの?
376 仁菜:ニィを抱きしめる時のりりちゃん、違う匂いがするんだよ?……それで気づかないと思う?
377 りり花:……何それ。
378 仁菜:りりちゃんが今好きなのは、ニィじゃないよ。
379 りり花:え……なんで……え。
380 仁菜:りりちゃん、別れよ。
381 りり花:なんでそんな事言うの?……仁菜は私のぬいぐるみでしょ?
382 仁菜:そうだね。……好きでもない私といるのは嫌でしょ?好きな人と一緒にいなよ。……八木さん、りりちゃんの事好きだって。よかったね。
383 りり花:なんでそんなこと仁菜が知ってるの。なんでそんな事言うの!私が好きなのは!
384 仁菜:八木さん、だよ。……ニィは、自分に嘘ついてるりりちゃんと、今までみたいにハグとかするの、嫌だな。
385 りり花:仁菜……。
386 仁菜:りりちゃん。りりちゃんは八木さんと幸せになるべきだよ。ニィは、りりちゃんの幸せが一番だから。
387 りり花:……わかった。仁菜の気持ちはわかったから。今訳わかんなくて、答え出せないから。ちょっと、頭冷やしてくる。ごめん。
<りり花が家を出る>
388 仁菜:あぁ……酷いこと言っちゃったな……。
389 仁菜M:何も言わずに、ただ全てを自分のせいにしていれば、りりちゃんを傷つけなかったかもしれない。りりちゃんに愛香症の自覚症状がない事なんて分かっていたのに。りりちゃんの匂いが徐々に消えていく。それは、包まれていた私の罪悪感を露わにして行った。……その罪悪感に耐えられるほど、私は強くなかった。
390 仁菜:ねぇ、仁菜。アナタと同じ姿になったら、りりちゃんは戻ってきてくれるかな?
391 仁菜N:私の部屋の、クローゼットの奥の奥に仕舞われたふわふわのくまのぬいぐるみを手に取り尋ねる。……りりちゃんも知らない、私の秘密。
392 仁菜:アナタは私で、私はアナタ……だもんね。
(間)
【恭介自宅】
393 りり花:八木、泊めて。
394 恭介:俺、彼女とセフレ以外の女の子家に入れたくないんだけど。
395 りり花:泊、め、て。
396 恭介:何があったんだよ。
397 りり花:なんでそう思うの。
398 恭介:午前中のあれに、さっきのあれで、今これ。流石に何も無いじゃ済まさないぞ。
399 りり花:仁菜と喧嘩したっていうか、なんと言うか。
400 恭介:ふーん。ったく仕方ねぇな。入れ、とりあえず。
401 りり花:お邪魔しまーす。
402 恭介:テキトーに座ってくれ。コーヒー?紅茶?
403 りり花:紅茶なんてオシャレなものあるの?
404 恭介:女子ウケいいからな、紅茶は。
405 りり花:八木サイテー。
406 恭介:で?何にするの。
407 りり花:紅茶。
408 恭介:やっぱり女子ウケいいんだな。
409 りり花:うん。
410 恭介:それで?
411 りり花:何が?
412 恭介:うちに来た意味。理由。
413 りり花:仁菜に別れよって言われて、何も考えられなかったから家飛び出してきちゃったの。
414 恭介:はい、これいんちょーの分。
415 りり花:ありがとう。
416 恭介:もうさ、別れちゃいなよ。
417 りり花:でも、
418 恭介:ネックレスなんて上げただけでしょ?そこから先は仁菜ちゃん次第。付けるも外すもあの子次第だよ。
419 りり花:いや、それは違う。ネックレスは、あの子にとっては外せない結婚指輪みたいなものなの。
420 恭介:そういうならなんでいんちょーは今ここにいるの?家帰りなよ。
421 りり花:い……やだ。
422 恭介:とりあえずハッキリしたら?りり花が好きなのは誰?
423 りり花:え、っと……。
424 恭介:どっち?
425 りり花:……八木。……たぶん。
426 恭介:うん、りり花の匂いもそうだって言ってる。
427 りり花:やだ。
428 恭介:俺にやだって言われても。
429 りり花:なんでこんな病気なんだろう。
430 恭介:俺はそういう病気になった事も周りの人間がなった事もないから分かんないけど、でも病気に振り回されるのってなんか違くね?好きなように、気の向くままに生きなよ。
431 りり花:ふふ……八木といるの楽だな。
432 恭介:そうか。……あ、でもちゃんと話してカタは付けろよ。
433 りり花:その言葉を八木の口から聞くとは。
434 恭介:これ、人間関係で後を引かないようにするコツ。
435 りり花:その人間関係の詳細は聞かないでおく。
436 恭介:そうしてくれ。……あと、いい加減恭介って呼んでよ。
437 りり花:……仁菜とちゃんと話してからね。
438 恭介:流石、「いんちょー」だな。……じゃあ、俺は名前で呼ばれるまで手は出さない。
439 りり花:へー、誠実じゃん。
440 恭介:ま、俺なりのけじめというか、そういうやつだ。
441 りり花:そっか。
442 恭介:今は全部忘れて疲れを癒すことだけ考えとけ。疲れたままじゃ何も上手くいかないだろ。
443 りり花:……うん。
(間)
【病院】
444 仁菜:……ん……。(目を覚ます)
445 光翔:仁菜ちゃん?わかる?
446 仁菜:先生……なんで?
447 光翔:仁菜ちゃんが座り込んでるの見つけてここまで運んだんだよ。……気分とかはどう?
448 仁菜:……大丈夫。
449 光翔:そっか、良かった。……あぁ、あとこれ。
450 仁菜:え……ネックレス……あれ、なんで、えっと……。
451 光翔:……ごめんね、処置をするのに邪魔だったから外しちゃったんだ。
452 仁菜:そ……っか。
453 光翔:恋人さんには僕から話すから。……仁菜ちゃんのせいじゃないからね。
454 仁菜:……うん。
455 光翔:先生、ちょっと提案があるんだけど聞いてくれる?
456 仁菜:……うん。
457 光翔:……っ……せっかくだからこのまま入院して検査とかしない?このまま家に帰すのも心配だし、その点病院にいてくれれば僕が診れるし。
458 仁菜:……うん。
459 光翔:仁菜、ちゃん?
460 仁菜:……なぁに?せんせ。
461 光翔:……ううん。何でもない。とりあえず今はゆっくり休んで、続きは明日話そう。
462 仁菜:……うん。
463 光翔:おやすみ、仁菜ちゃん。
◇
【恭介自宅】
464 りり花M:家を出てから、家には帰れなくなっていた。なんだか怖くて。戻ってしまったら、全てが元の道に戻ってしまいそうで。私はただ逃げていただけだって私もわかっていた。早く探さなきゃ、早く家に戻らなきゃと思う日もあった。……それでも帰れなかった。恭介の横は居心地が良かったから。
465 恭介:りり花、電話。
466 りり花M:誰かからの電話。誰からの電話かなんて見ていないのにその電話には出たくなかった。出てはいけないと、なんとなくそう思った。
467 恭介:りり花?出ないの?
468 りり花:出、る。……はい。
<光翔からりり花に電話>
469 光翔:私は仁菜さんの担当医の小野です。園田りり花さんの携帯でお間違いないですか?
470 りり花:……はい。
471 恭介M:帰したくなかった。帰したらりり花が離れていく気がしたから。ずっとこのまま時が流れればいいとすら思った。……電話をしているりり花の表情を見ればなんとなく察しがついた。この温い時間が終わる。
472 りり花:あの……先生が私になんの御用で……?
473 光翔:仁菜さんの事で少々。
474 りり花:仁菜の事で……はい。
475 光翔:……何も聞かないんですか?
476 りり花:どういう事、でしょうか。
477 光翔:仁菜さんの行方ですよ。
478 りり花:行方、って。
479 光翔:まさか家に戻ってないんですか?
480 りり花:え……。
481 光翔:家に戻っていれば、仁菜さんが家にいない事くらい分かりますよね?何故僕が電話したと思いますか?
482 りり花:……わかりません。
483 光翔:はぁ……仁菜さん、うちに入院してます。
484 りり花:え?
485 光翔:貴女、今どちらに?
486 りり花:えっと、友達の家に。
487 光翔:道理で繋がらないわけだ……。
488 りり花:あの、仁菜は、その、大丈夫なんですか?入院って……。
489 光翔:大丈夫かどうかはご自分の目で確かめてはいかがですか?
490 りり花:そう、ですよね。
491 光翔:彼女の病室は405号室です。
492 りり花:分かりました。
493 光翔:……あともう1つ、お伝えしなければいけない事があります。
494 りり花:はい。
495 光翔:仁菜さんを発見した際、切れたネックレスを手に持っていました。恐らく、ご自身で切ったものと思われます。ぬいぐるみ症の彼女がその行動を取った意味、よく考えて下さい。
496 りり花:え……仁菜が、ネックレスを。
497 光翔:詳しいことは分かりませんが状況だけならそう判断するのが妥当かと。
498 りり花:そう……ですか。
499 光翔:お見舞いに来るか来ないかは貴女にお任せします、が……来ないなら仁菜ちゃんは諦めてください。では。
<電話が切れる>
500 りり花:え、それ……あっ。
501 恭介:大丈夫か。
502 りり花:仁菜……今病院にいるんだって。
503 恭介:そっか。とりあえず良かったじゃん、無事で。
504 りり花:私、どうしよう。行くべき、だよね。
505 恭介:……とりあえず一回家帰ったら?家に戻って、ゆっくり考えて、答え出しなよ。
506 りり花:う、ん。
◇
【自宅】
507 りり花M:久々に帰る、仁菜がいない家はとても冷たかった。家の中は真っ暗だった。唯一のあかりは、少し空いたカーテンから差し込む月の光だけ。
508 りり花M:家の中を見回すと、仁菜の物が床に散らばっていた。……その中に見覚えのある小さな手鏡を見つけた。
509 仁菜:この手鏡、りりちゃんみたいだから仁菜が持つ!……ふふ、これ持ってるだけで、りりちゃんがそばに居るみたいでなんでも頑張れそう!
510 りり花M:そう仁菜が言うから私はクマの柄の手鏡を買った。……ふいにその時のデートで買ったぬいぐるみのことを思い出した。茶色の毛で、ふわふわのくまのぬいぐるみ。
511 りり花M:散らばった部屋でそれを見つけるのに、それほどの時間はかからなかった。……窓際。テレビのすぐ側にぬいぐるみは落ちていた。
512 りり花:こんな所にあった。……え。
513 りり花M:ぬいぐるみは、ズタズタに引き裂かれていた。
(終)
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Special Thanks
みなみ様
台本の上に掲載してある画像はツイキャス用のキャス画としてみなみ様が作ってくださいました!もし良ければ上演の際にお使いください♪
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