【朗読】病気の彼女へ。
『真っ暗な街がオレンジ色に染まって、
ピンクの街が真っ白の街になって。』
日常を共に過ごしてきた最愛の人が、
もしいなくなるとしたら。
貴方はどうしますか?
-------- ✽ --------
どうしてお前だったのか。
どうして俺じゃなかったのか。
そればかり考えてしまう。
はじめは普通だった。
いつも通りのお前が病院のベットにいる。
それだけ。
「おはよう」と「おやすみ」
を言う場所が変わっただけ。
行ってきますのキスとただいまのキス
をする場所が変わっただけ。
ただそれだけだった。
そう、最初はただそれだけ。
月日が流れて、
季節が流れて、
色々なことがあった。
庭で小さな男の子と遊んで怒られたり、
検査のご褒美でゼリーを食べたり、
一緒に花を見に行ったり、
お義母さんから泣いて謝られたり、
お前とこれからのことで喧嘩したり、
…お前が散歩中に体調を崩したり。
辛い日々も、楽しい日々も、
一緒に乗り越えた。
何があってもお前の笑顔はそのままで。
おしゃれが好きで、
可愛いものが好きで、
イケメンが好きで(笑)、
そんな所もそのまんま。
俺はそんな姿に救われてた。
あっ…でも、甘いものは食べなくなったね
食べれなくなった……かな。
目の下のクマが消えなくなって、
日に日に弱っていく姿。
副作用からものが食べれなくなって、
日に日に立てなくなっていく姿。
自分が一番辛いのに、
泣いているお義母さんの背中をさする姿。
どんなに辛くても、
誰かがいる時は笑顔を絶やさない姿。
それを見て泣かない日はなかった。
お前に「またあした」と告げて
病室を出て扉を閉めて。
その扉の前で泣いた数なんで数え切れない程。
それをお前が知っていたのかはわからないけれど、
真っ暗な街がオレンジ色に染まって、
ピンクの街が真っ白の街になって。
そんな白い息が出る日、
『別れよう』
お前は俺にそう言った。
いつか言われるかもしれないと覚悟していたこの言葉をお前に言われるのが怖くて、
この時はのらりくらり交わしてしまったけど、やっと理解できたよ。
言葉の本当の意味を理解するまで、随分かかってしまったけれど、
今からでも間に合うかな。
今君に届けるよ。
ー END ー
0コメント