【不問2】Kill Me Twice

不問2/時間目安20分


【題名】
Kill Me Twice
(キル・ミー・トゥワイス)


【登場人物】
キラー:暗殺者
グリム:死神


(以下をコピーしてお使い下さい)

『Kill Me Twice』作者:なる
https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/24937566
キラー(不問):
グリム(不問):



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001 キラー:何見てんの。

002 グリム:……。

003 キラー:そこ、居るの分かってるから。

004 グリム:隠れていたつもりだったんですけどね。

005 キラー:あんたは普通の人間とは違う匂いがする。だから隠れててもすぐ分かる。

006 グリム:勘が鋭い上に、鼻もいいと来ましたか……それは事前情報にはありませんでしたねぇ……なるほど……。

007 キラー:それで?何か用?

008 グリム:いやぁ、瞳は碧眼(へきがん)と聞いてましたが、これは……アースアイですか。おぉ……綺麗ですね……噂の通りです。

009 キラー:……あんた、見えてるのか?

010 グリム:おや?その右腕……ん〜?……それ、偽物ですね?随分上手く使いこなしているようですが……そのマークはフォニーのもの……数年前のモデルですが、これだけ馴染んでるのも納得ですね。流石フォニーです。

011 キラー:……おい。

012 グリム:いやぁ、その銀色の髪も素敵ですねぇ……月明かりがより一層引き立たせるといいますか……これだから人間は面白い……。

013 キラー:おい、話聞いてるか?

014 グリム:聞いてますよ?えっと……何の話でしたっけ?

015 キラー:あんた……死にたいのか?

016 グリム:おっと……殺気をしまって頂けますか?私には効かないのでこのままでもいいのですが、予定にない人間が死ぬのは避けたいので。

017 キラー:(舌打ち)……それで、何か用があるんじゃないのか?

018 グリム:あぁ、そうでした。では早速失礼するとして……(咳払い)……私はグリム。月の神ルナの遣いとして、貴方に死亡予告をしに参りました。

019 キラー:……は?

020 グリム:アナタ様の寿命は残り1ヶ月です。今日から丁度1ヶ月後にアナタ様の命を頂戴しに参ります。

021 キラー:グリム、って言ったか?……あんた、殺されに来たのか?

022 グリム:いえいえ、そんな事は。……それに、アナタ様に私は殺せませんよ?

023 キラー:何だと?

024 グリム:私は人間で言うところの……死神、でしたかね。ですので、人間に殺せるような存在ではありません。

025 キラー:ほう?……つまりあんたを殺せば死神をも手にかけたって称号が手に入るわけだ。

026 グリム:まぁ……そうなりますね。

027 キラー:ふぅん。

028 グリム:あとこれは私の個人的なお願いなのですが……。

029 キラー:早く言いな。簡潔じゃないものは嫌いだ。

030 グリム:これは失礼。……アナタ様が死ぬ前に、私のことを殺して下さい。

031 キラー:はぁ……。

032 グリム:アナタ様くらいにしか頼めないんです。

033 キラー:そのアナタ様ってどうにかならない?気持ち悪いんだけど。

034 グリム:ではなんとお呼びしましょう?

035 キラー:そうだな……キラーでいい。

036 グリム:ではキラー様。私の提案、受けて頂けますか?

037 キラー:どうせ1ヶ月なんだ。ありとあらゆる方法でその息の根、止めてあげる。

038 グリム:ありがとうございます。……よろしくお願いしますね、キラー様。






039 キラー:だからさ、隠れてても分かるって言ったよね?

040 グリム:そうでしたね。いつもは隠れてないといけないのでその癖が抜けなくて。

041 キラー:へぇ、今回みたいにその、死亡予告?ってのはしに行くものなの?

042 グリム:えぇ。まぁいつもは1週間前ですけどね。

043 キラー:1週間前?

044 グリム:キラー様はイレギュラーなんです、我々にとって。なので今回は早めに、と。

045 キラー:よくわかんないけどまぁ先に言ってくれて助かったよ。

046 グリム:何かやり残したことでも?

047 キラー:山ほどね。依頼は山積み。人間ってのは醜いものだね。

048 グリム:ほう……ちなみにどんな所が?

049 キラー:そうだなぁ、殺したいほど憎んでるクセに自分では手を下さないところとか。人に頼むくらいなら自分で殺ったほうが気持ちも晴れるだろうに。

050 グリム:そうですねぇ。自分の手で命を刈り取る感覚……堪らないですね。

051 キラー:そう?殺意がある相手ならまだしも、基本知らない人だからなぁ。

052 グリム:私も刈り取る相手は知らない人ですよ。

053 キラー:じゃああんたの方がおかしいかもしれないな。

054 グリム:肉体と魂を切り離した時に出るモシュネを見るのが私の楽しみなんです。キラー様もこの仕事に就いたら分かりますよ。

055 キラー:モシュネって何?

056 グリム:その人の人生をまとめた巻物、ですかね。全ての記憶がそこにまとまっています。思い出はもちろん、肉体の記憶、奥底に眠った過去の記憶も全て。

057 キラー:それを見るのが楽しみって……死ぬよりそっちの方が嫌かもしれないな。

058 グリム:肉体が消えるのと同時にモシュネも消えてしまうのでそれが残念なところなんですけどね。

059 キラー:そうかよ。……ところでさ、さっきからかなりの威力の電気をその椅子に流してるんだけどどう?人間じゃ死んでると思うんだけど。

060 グリム:全然ですね。電気が流れている事も今言われてから気づきました。

061 キラー:はぁ……これもダメか。

062 グリム:お手数をお掛けします。

063 キラー:まったくだよ。絞殺もダメ、電気椅子も効かない、飛べるから屋上から突き落とすのも論外。……どうしたら死んでくれんの。

064 グリム:私にも分からないですね。色々な方にお願いはしているのですが、1週間という短い期間で私を殺すのは到底不可能でして。

065 キラー:はぁ……グリムはさ、どうして死にたいの?

066 グリム:人間になりたいんです。そのためには魂にならないといけなくて。

067 キラー:死ねば魂になれると。

068 グリム:はい。まぁ死ぬと言っても、死神の死には2段階あるんです。肉体の死と魂の死、そのふたつをやり遂げてやっと転生の輪に入れるんです。

069 キラー:魂にならなきゃいけないのに魂まで殺すのはダメなんじゃないか?

070 グリム:その辺は神々の決まり事の話になるので難しいことは省きますね。

071 キラー:分かった。それなら深くは聞かない。

072 グリム:お優しいんですね?

073 キラー:面倒なことが嫌いなだけ。知らなくていい事ならそれでいい。

074 グリム:そうですか。……キラー様のような人間に出会ったのは初めてです。

075 キラー:そっか。……死神って面白いな。






076 グリム:(咳き込む)……なんですかコレ。

077 キラー:お、効いてそうじゃん。それ毒ガスね。

078 グリム:効いているのかはともかく、ちょっと煙が凄いです。

079 キラー:どう?なんか焼ける感覚とかない?

080 グリム:特にないですね。

081 キラー:はぁ……これもダメか。じゃあ止めるね。

082 グリム:ありがとうございます。

083 キラー:死神は何が効くとかないの?

084 グリム:例えば?

085 キラー:それを聞いてるんだけど……例えば、吸血鬼はニンニクと十字架が苦手って言うじゃん。なんかそういうやつ死神にはないの?

086 グリム:人間が扱えるものにはないですね。

087 キラー:ある事にはあるんだ?

088 グリム:死神の鎌に触れてはいけないと言われていますね。何でも、あの鎌はどんなものの魂も刈り取ってまうそうですから。

089 キラー:ならそれに触れたらいいじゃん?

090 グリム:前に言ったの忘れました?

091 キラー:あぁ、刈り取るだけじゃダメなんだっけ?

092 グリム:そうです。

093 キラー:じゃあその魂をどうにかして殺せばいいわけだ。

094 グリム:そうなりますね。

095 キラー:あと2週間か……殺せるといいな。






096 グリム:キラー様?

097 キラー:あ?

098 グリム:おぉ、怖い。

099 キラー:あぁ、グリムか。

100 グリム:これはまた……新しいファッションですか?

101 キラー:そんなわけないでしょ。返り血だよ。ちょっと派手にやりすぎた……。

102 グリム:そうですね、人間が見たら卒倒しそうです。この人たちは……あぁ、死亡予定者リストにある人達ですね。

103 キラー:へぇ、そんな事もわかるのか、面白いな。

104 グリム:死神ですから。それを管理するのが我々の仕事ですよ。

105 キラー:間違って早く死ぬ事とかないの?

106 グリム:よくありますよ。人間にイレギュラーは付き物ですからね。そうなったらその日に死ぬ予定だった人間の寿命を少し伸ばすだけです。

107 キラー:人間にイレギュラーは付き物、か。面白いな。

108 グリム:そもそも人間はイレギュラーな存在ですからね。

109 キラー:どういう意味?

110 グリム:最初の人間がどのように生まれたかなんて結局のところ誰にも分からないわけで、そうなると皆想像をする訳ですよ。どのように生まれたのかってね。

111 キラー:ほぅ……それで?

112 グリム:我々の間では、人間は天使のなり損ないであると考えられています。生まれた時から羽無しで、神から輪を与えて貰えず、空から落とされたと。

113 キラー:あはは!なんだそれ。仮にだ、人間が天使のなり 損ないだったとしたら、こんなに世の中殺伐としてはいないだろうね。大人は喜んでスラムの子供を助けるだろうし、子供はみんな読み書きができるだろうよ。……しかし、世界は逆だ。大人はスラムの子供をゴミのように扱うし、読み書きができない子供なんて山ほどいる。人間は悪魔のなり損ないだって方が正しいとすら思ってしまうよ。

114 グリム:それも確かにそうですね。

115 キラー:まぁどちらも見た事がないから細かいことは分からないけどな。人間の思う悪魔と天使であってるなら、人間は悪魔だよ。世の中には善人の塊みたいなやつもいるけどな。

116 グリム:天使のような方にお会いした事がおありで?

117 キラー:……まぁな。

118 グリム:へぇ、もう少し詳しく教えてください。

119 キラー:嫌だね。

120 グリム:モシュネでじっくり見られるのと、ご自分の口で話すのと、どちらがよろしいです?

121 キラー:(舌打ち)……それは卑怯だろ。……子供の時に花とパンを貰った。あの身なりじゃ恐らく貴族の子供だろうな。

122 グリム:やはりそういうのは分かるものなんですか?

123 キラー:色んな人間を見てきたからな……靴の輝き具合、服に付いている宝石、刺繍の細さ……1番わかりやすいのは仕草だな。あれは体にこびりついてるものだから、見ればある程度はわかる。

124 グリム:なるほど……その方の髪の色や瞳の色などは?

125 キラー:目の色なんて覚えてないが髪色はゴールドだった気がする。

126 グリム:もしかしてその方……(※被せ)

127 キラー:(※被せ)あーあーやめろやめろ。そいつの事なんて今お前に言われるまで忘れてたんだ。今更会うこともないだろうしこれ以上の事は知りたくない。

128 グリム:……そうですか。

129 キラー:この国の影に生きる人間は、貴族様の事なんて知らなくていいのさ。……あぁ、そうだ。あんたの魂を殺す件だけど。

130 グリム:あぁ、はい、なんでしょう?

131 キラー:死神の鎌は人間には扱えないって事だったよな?

132 グリム:えぇ。

133 キラー:イレギュラーなら扱える……ってことは?

134 グリム:イレギュラー……キラー様が、という事ですか。……前例がないので分かりませんが、キラー様になら出来るかもしれませんね。

135 キラー:そうか。それなら話は早いな。この手であんたの事、葬ってやる。決行日は丁度一週間後。

136 グリム:キラー様の命日、ですね。

137 キラー:まだ予定、だ。どちらが死ぬのが先か、勝負しようじゃないか。

138 グリム:……あの、キラー様。

139 キラー:なんだ、そんな改まって。

140 グリム:死因、知りたいですか?

141 キラー:えっ……。

142 グリム:本当は規律違反なんですけれど。アンフェアじゃないですか。勝負になりません。

143 キラー:へぇ、死神のくせにそういう所気にするんだ。

144 グリム:人間に近いと言ってくださいますか?人間はフェアじゃないとすぐグチグチするじゃないですか。それです。

145 キラー:アンフェアをぶち壊して勝つのが楽しいのにな。わかんないわ。

146 グリム:そういうキラー様は死神寄りですね。寧ろ悪魔?

147 キラー:知らないね。……さぁ帰った帰った。あんたを殺す準備をしないとね。

148 グリム:ふふ……それでは。楽しみにしていますね。






(キラー役の方は最後に向けて少しずつ弱っていく)

149 キラー:(咳き込む)

150 グリム:あーあーなんですか、このザマは。

151 キラー:あはは……ちょっとやらかした。

152 グリム:私との約束はどうするんです?

153 キラー:その前に傷の心配するとかないの?

154 グリム:だって貴方、今日は死にませんから。

155 キラー:はぁ……死神は便利だ、全く。

156 グリム:それはどうも。……でも明日までもつんですかねぇ、その傷で。

157 キラー:知らないね、そんなこと。

158 グリム:リストには細かい時間まで書いてないんですよ。

159 キラー:そうか。……痛っ……。

160 グリム:お可哀想に。……あぁ、そうそう。持ってきたんですよ、死神の鎌。……どうです?かっこいいでしょう?

161 キラー:あぁ、そうだな。……へぇ、こんな形してんだ。思ってたのと違ったな。

162 グリム:死神によって違うんですよ。全員分の鎌が保管されている倉庫があるのですが圧巻ですよ。お見せできないのが残念です。

163 キラー:そりゃ残念。……ところでさ。

164 グリム:はい?

165 キラー:明日まであとどのくらい?

166 グリム:あと10分も無いかと。

167 キラー:そっか……ギリギリかな。

168 グリム:今回もダメですか……残念です。

169 キラー:ちょっと、それ貸してよ。

170 グリム:気をつけてくださいよ。人間が触ったら跡形もなく……えっ。

<キラーがグリムに鎌を一振り>

171 キラー:人殺すのには慣れてんだ。死神だろうがなんだろうが、殺せるなら同じ。……へぇ、死神って死ぬとこんな感じになるんだ。……あぁ、もう一回当てないとダメか……。

<キラーが鎌をもう一振>

172 キラー:これで……。

<キラーが倒れ込む>

173 キラー:依頼、完、了。

<キラー絶命>


(間)


174 グリム:痛てて……ちゃんと当ててくれなきゃダメじゃないですか……(ため息)死亡確認、と。いい顔しちゃって、私の事は殺し損ねたくせに。……ちゃんと2回、殺してくださいねって言ったじゃないですか。まぁ、私を半分だけでも殺したことは褒めてあげますよ。……神に挑む人間……ふふふ、これだから人間は面白いなぁ。


(終)

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